度々「ゲリラ豪雨」と呼ばれる集中豪雨に見舞われる東京都心部。特に渋谷は巨大なすり鉢の谷底に位置しており、しばしば冠水の被害に遭っている。電車やバスなど、多くの交通機関のハブとなる街だけに、交通期間が麻痺したときの影響は著しいものがある。
今年7月24日にも、豪雨の影響で渋谷駅宮益坂改札が冠水し、閉鎖される事例が発生した。

2015年7月24日に冠水した渋谷駅地下宮益坂改札。
こうした大雨対策のために、現在渋谷駅東口前では大規模な工事が実施されている。「渋谷駅街区土地区画整理事業」のひとつ、地下貯留槽の整備工事だ。
貯留槽は、現在の渋谷川に作られる。渋谷駅周辺の地下に川が流れているのは広く知られるところだが、まずは渋谷川についておさらいする必要がある。
暗渠化された渋谷川
渋谷川はかつて多くの源流を持っていたが、今やそのほとんどが暗渠化されている。多くが1964年の東京オリンピックをきっかけとした1960〜70年代に行われ、渋谷川は雨水やわずかな下水を流す河川となっていた。
本事業のため2013年に取り壊された「東急百貨店東横店東館」は渋谷川の上に建っており、そのため地下階が存在しなかった。食品街があったのは西口である。

東急百貨店跡地。79年の歴史に幕を下ろし、すでにその面影はない。
渋谷川の姿を確認できる”開渠”となっている区間は、渋谷警察署の向かいにある山下書店南口店横から並木橋までの間だ。普段は僅かな水量しかないが、大雨が降るとたちまち増水する。

大雨が降ったあとの渋谷川。水の流れも早い。

渋谷川を横から見る。上流はすでに暗渠化されており、姿を見ることはできない。
天現寺から先は二級河川の「古川」となる。広尾、麻布方面を抜け、東京タワーの脇を通り、東京湾へ注いでいる。
オアシス化する渋谷川
本事業により、渋谷川は大きく変容を遂げようとしている。2017年には、「渋谷川賑わいの広場」および「渋谷川沿い緑の遊歩道」として、大きく生まれ変わるのだ。
東急電鉄が2013年に公開した資料には、以下のようなイメージが描かれている。

「渋谷川賑わいの広場」。ヒカリエからはこのような風景が広がる。(東急電鉄公式サイトより)

「渋谷川沿い緑の遊歩道」。かなりゆったりとしたスペースがとられている。(東急電鉄公式サイトより)
水辺の少ない渋谷エリアに、暗渠化されていた渋谷川が新たに復活する形になる。また、同じ区画に地上33階、高さ180メートルの高層複合施設の建設も予定されている。こちらのオープンも、渋谷側の工事と同様、2017年が予定されている。

予定されている高層複合施設。渋谷駅周辺は高層ビル地帯となる。(東急電鉄公式サイトより)
ゲリラ豪雨には屈しない
4000トンの地下貯留槽
話を冒頭のゲリラ豪雨の話題に戻すと、渋谷川は上記オアシス化のほかに、もうひとつの役割を持つことになる。それが地下貯留槽の機能だ。
その場所は、東口のロータリー付近の地下。深さ25メートルほどの掘削作業を行ったところに鉄筋コンクリートの貯蓄槽を埋め込み、一時的に水をプールする。貯水量は4000トン。これにより、処理できる雨量が25ミリメートルほど上昇するという。

ヒカリエ側から工事箇所を望む。
渋谷駅周辺は、現在このような事業計画が進んでいる最中にある。詳細は、東急電鉄が手がける「SHIBUYA FUTURE」でも随時公開されているが、当編集部でも今後の渋谷の変化を細かく注視していきたい。