JR東日本が2016年6月8日付けで発表した「駅改良の工事計画について」というリリースは、多くの反響を呼んだ。
対象となった駅は、2020年のオリンピック競技大会の開催エリアにある、千駄ケ谷駅、信濃町駅、そして原宿駅の3駅。大会期間中は海外からの観光客だけでおよそ2000万人とも予想されており(「みずほ総合研究所」/2014年1月31日)、こうした多くの人出に対応するべく、コンコースを拡張したり、バリアフリー機能を強化したりと、乗客の利便性をはかる改良工事を行うという。

多くの人で賑わう表参道口。東京メトロ「明治神宮前」駅へはこちらの出入り口を使用する。
なかでも大きな話題となったのが、原宿駅舎の改良工事だった。発表されたパース画には新築の駅舎が描かれており、現在の駅舎は見当たらなかった。

「駅外観(明治神宮側)」(JR東日本「駅改良の工事計画について」より)

「改札内コンコース」(JR東日本「駅改良の工事計画について」より)
新しい駅舎は、線路とホームの上に橋のように渡される二層の建物になる。橋の南側にはこれまでと同じ表参道口が、そして北側には明治神宮口が新設される。年末年始のみ使用された臨時ホームは、外回りホームへと変更になるのだ。

「工事計画」(JR東日本「駅改良の工事計画について」より)
大正時代の面影を残す原宿駅舎
原宿駅は1906年(明治39)、今の場所よりも代々木寄りに開業した。この付近一帯を原宿村といい、駅名はその地名から付けられたものだ。原宿駅は関東大震災の翌年1924年(大正14)に現在の場所に移転し、もとの場所に誕生したのが原宿宮廷駅だった。基礎を表面に出すハーフティンバー様式を採用しており、都内では最古の木造建築となる。

現在券売機のある位置から渋谷寄りの「NEWDAYS」がある一角まではのちに増築されたもので、竣工時には存在しなかった。設計は、当時鉄道省に在籍していた長谷川馨。
駅構内は細かな改修も行われているため、ただ通り過ぎるだけではその歴史を感じることは難しいかもしれない。しかし一歩外に出て駅舎を眺めてみれば、造作のひとつひとつに現代にはない風情が感じられるのではないだろうか。

通気口の役割を持つ八角塔。

外壁に掛かる時計には蔦があしらわれている。

出入り口の脇などに見られるステンドグラス。
果たして駅舎は取り壊されてしまうのか。発表では、改良工事後の旧駅舎について「取り壊す」とも「移設・保存する」とも明言していない。JR東日本広報部に問い合わせたところ、「今後どのような対応を取るかはまだ検討中」だという。
それでは、原宿駅至近に存在するもうひとつの駅舎「宮廷ホーム」についてはどうだろうか。