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さらば、有楽町の立ち食い焼きそば 創業40年の老舗「名代 後楽そば」耐震補強工事により閉店へ(千代田区)

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2016年5月26日
さらば、有楽町の立ち食い焼きそば 創業40年の老舗「名代 後楽そば」耐震補強工事により閉店へ(千代田区)
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写真・文_編集部

2016年5月27日(金)翌朝をもって、有楽町駅日比谷口を出た高架下にある「名代 後楽そば」(以下・後楽そば)が閉店する。JR東日本による耐震補強工事および有楽町駅改良工事などによるもので、40年余りの歴史にいったん幕を下ろす形となる。

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東京人に愛された
立ち食い焼きそば

創業は1972年(昭和47)。かつては現在の場所とは反対の銀座口側、2004年に閉館した映画館「シネ・ラ・セット」(旧有楽シネマ)の隣にあった。今も残る「フルーツ百花園」の向かい、有楽町イトシアの「大黒屋」がある角地だ。区画整理により移転を余儀なくされ2003年に一時閉店し、2年後の2005年に日比谷口へ移った。

日比谷口を出てすぐの高架下にある「後楽そば」。

日比谷口を出てすぐの高架下にある「後楽そば」。吉祥寺や新宿にも店舗があったが、今ではこの有楽町のみとなった。

同店の人気メニューは、何より「焼きそば」である。スタンディング形式のそば屋は少なくないが、メニューに焼きそばがある店は珍しい。

「やきそば(並)」380円

「やきそば(並)」380円。メニューではひらがな。

入り口で購入した食券を渡して店内に入ると、すぐに「名代 後楽そば」と書かれたプラスチック皿に、挽肉とキャベツ入りの自家製麺、そして紅しょうががドンと乗ってやって来る。テーブルに置いてある薬味のネギを乗せて食べるもよし、トッピングで生卵を落とすもよし、である。昔ながらのシンプルなソース味と、有楽町という場所、そして立ち食いという風情が、後楽そばの魅力だ。

稲荷2個とスープが付く「やきそば稲荷セット」(520円)も人気。

稲荷2個とスープが付く「やきそば稲荷セット」(520円)も人気。

そば、うどん、焼きそばなど、麺の種類を問わず注文できる追加トッピング。

そば、うどん、焼きそばなど、麺の種類を問わず注文できる追加トッピング。

テイクアウトも行っている。

テイクアウトも行っている。

24時間営業で、深夜でも早朝でも暖かいそばが食べられるとあって、飲み会帰りの学生や深夜残業で疲れたサラリーマンたちの強い味方だった。また、至近にニッポン放送があり、放送作家やパーソナリティにもファンが多かった。一般層から業界人まで閉店を惜しむ声は多いが、その理由でもある耐震補強工事とはどのようなものなのだろうか。 

ドイツをモデルとしたレンガアーチ

補強工事が行われるのは、有楽町駅を支えるレンガ造りで半円型のアーチだ。ドイツの高架橋をモデルに、1910年(明治43)に建造されたものである。

電化された東海道本線の東京付近(1931年)

関東大震災後、電化された東海道本線の東京付近(1931年)。走る山手線の下にレンガアーチが覗く。

明治に入り次々と私鉄事業者が誕生した東京では、個々のターミナル駅が離れており、相互連絡が行えないという問題を抱えていた。そこで東京市の都市計画の一環としてこれらを繋ぐ路線の新設が進められたが、すでに市街地化が進んだ都市部では線路を敷くことが難しく、実現には高架線によって電車を走らせる必要があった。

当時、すでにベルリン市街線では高架線や環状線が整っており、逓信省はこれらの設計に携わった建築技術者のヘルマン・ルムシュッテル氏、フランツ・バルツァー氏らを招いて提案を聞いた。その際、日本では鉄筋コンクリート技術が十分でなかったため、レンガ状のアーチを連続させて橋を作る方式が採られたのである。

歴史的建造物を後世に残す

竣工から100年余りが過ぎた今も当初の姿を残している貴重な建造物だが、今後想定される首都圏直下型地震に備えて、東日本大震災以降から対策がとられてきた。JR東日本では2012年に「首都直下地震に備えた耐震補強対策等の着手と地震観測体制の強化について」および「耐震補強対策等の更なる強化について」を発表し、以降5年をかけて整備を進めている。

補強が実施されたアーチ部分。新橋駅の南側、港区新橋3丁目付近。(Google Mapより)

補強が実施されたアーチ部分。新橋駅の南側、港区新橋3丁目付近。(Google Mapより)

すでにJR東日本では、神田駅~御茶ノ水駅間、新橋駅~浜松町駅間などで補強工事を実施してきた。これらの工事には、耐震補強だけでなく歴史的建造物を後世に残す意味合いも含まれている。そのため、外観を損ねないよう、人力または小型重機によってレンガの基礎までを掘削し、アーチの内側に厚さ40〜70センチメートルのRC造アーチを造って、その造形を保っている。

またこの近所に出店できる様、
努力してまいります

長い歴史の間に駅周辺にあった路地は跡形もなくなり、有楽町は大きくその姿を変えた。そして、またひとつ有楽町の灯が消えようとしている。

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店頭に閉店のチラシが掲げられてから、後楽そばには入れ替わり常連客たちが訪れる。唯一の希望は、閉店のお知らせに書かれた「またこの近所に出店できる様、努力してまいります」の文字だ。耐震補強を終えた有楽町で、「後楽そば」のあの焼きそばにもう一度会える日は来るのだろうか。最後の営業は、5月27日(金)の翌日、28日(土)の早朝だ。

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