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神代植物公園大温室リニューアルと76年前の「東京緑地計画」(調布市)

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2016年5月12日
神代植物公園大温室リニューアルと76年前の「東京緑地計画」(調布市)
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文_編集部

2014年9月から改修工事を行っていた調布市の「神代植物公園大温室」が、2016年5月12日(木)にリニューアルオープンした。現存する温室は1984年(昭和59)に建設されたもので、誕生から30年余りにおよぶ。そのため、まず断熱性の高い複層ガラスに交換し、バリアフリー対応のための手すりも設置する。

5月10日(水)からスタートしているバラフェスタ。園内には色とりどりのバラが咲き乱れる。

5月10日(水)からスタートしているバラフェスタ。園内には色とりどりのバラが咲き乱れる。奥に見えるのが大温室。(公式Twitterより)

さらに中庭に新たに温室が増築される。これにより、およそ480㎡ほど温室部分の敷地面積が広がり、ランや原種ベゴニアなどが展示されるという。また、昨年2015年1月にチリ共和国の国立ビーニャ・デル・マル植物園と技術協力に関する協定を結んだことにより、チリ植物のコーナーも増える。5月29日(日)までは記念イベントとしてチリの物産販売やダンスショーが行われる。

広い敷地をたたえる神代植物公園だが、この公園が誕生した経緯には、東京のある計画があった。

東京にグリーンベルトをつくる、
「東京緑地計画」

東京都立唯一の植物公園、神代植物公園が誕生したのは1961年(昭和36)。それ以前は「神代緑地」という名前で知られていた。この「神代緑地」が生まれたのは、1939年(昭和14)に策定された「東京緑地計画」がきっかけだった。

この「東京緑地計画」とは、1924年(大正13)にオランダで開かれた、アムステルダム国際都市計画会議で決定した大都市圏計画の7原則に影響を受けたものだ。「大都市の膨張抑制」、「衛星都市の建設による人口分散」、「土地利用規制の確立」などを謳っており、なかでも「グリーンベルトの設置」は、都心部と郊外の間にグリーンベルトと呼ばれる緑地帯を挟むことで、都心の人口密度化を防ぐというもの。東京でも環状線に緑地を巡らせてこれを実現しようと、約96万2059ヘクタールにもおよぶ緑地化を検討したのである。日本で初めての都市計画のマスタープランだった。

計画が動き出したのは、翌1940(昭和15)であった。この年は神武天皇即位から2600年目を数える紀元2600年。記念すべき年として「紀元二千六百年記念行事」が各地で執り行われていた。日中戦争激化で幻となった東京オリンピック開催と万国博覧会も、これらの記念事業として推し進められたものだ。東京府はその一環として土地を買い上げ、次々と緑地化を進めた。まず緑地帯の中心として考えられたのが、砧、小金井、舎人、水元、篠崎、そして神代の6ヶ所、合計して約637ヘクタールにおよぶ土地であった。

1940年(昭和15)11月11日に宮城前広場で行われた記念式典の様子。

1940年(昭和15)11月11日に宮城前広場(現・皇居外苑)で行われた記念式典の様子。

これらの緑地は、大戦期には帝都防衛の意味合いを持つようになり、防災緑地としても活用された。そして戦後、1957年(昭和32)の「首都圏整備法」によって、首都圏の外周に10km幅のグリーンベルトをつくることが改めて定められた。しかし、既にベビーブームや集団就職など人口増加の問題を抱え始めていた東京は、郊外の緑地化よりも市街地化を望むようになっていた。こうして、1965年(昭和40)の「首都圏整備法改正」では、現存する緑地の保全を図るに留めた。さらに翌年、「首都圏近郊緑地保全法」として、17区域、総面積1万5693ヘクタールにおよぶエリアが保全地域として指定された。

葛飾区内にある水元公園。その敷地面積は936,999平方メートルと、都内第1位の広さを誇る。

葛飾区内にある水元公園。東京とは思えない広大な芝生が広がるその敷地面積は936,999平方メートル。都内第1位の広さを誇る。

名残りを残す緑地化の遺産

砧公園や小金井公園など、各地に現存する公園は当時の緑地化が残した遺産である。環状緑地帯構想は大阪や名古屋、神奈川などにも広まったため、東京だけでなく各地方にも大規模な緑地を生んだ。

戦後、東京都市部はその周縁を飲み込んで肥大化し、グリーンベルトが郊外と都市部を繋ぐような、当初想定されていた構想は潰(つい)えた。しかしいずれの公園も、都民に束の間の安らぎを与える憩いの場になっていることは間違いない。神代植物公園は今、大温室のリニューアルを終え、4500種、10万本の植物を育んでいる。

新設される温室内に咲く球根ベゴニア。(Twitterより)

新設される温室内に咲く球根ベゴニア。(公式Twitterより)

自然の少ない東京で目にする緑は、何かしらの意図を持って生まれていることが多い。何気なく訪れた公園が、遠い昔に考えられた緑化計画の名残りを残していると思えば、少しその風景も変わって見えるのではないだろうか。

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