六本木に、巨大な地図が完成しつつある。そのモノクロの地図は、少し離れた位置から見ると陰影がたくさん付いていて、少し不思議な形をしている。ペンで描いたものでも、衛星で撮ったものでもないようだ。近寄ってみると、それが小さな写真だとわかる。写真の集積で作られた緻密なコラージュだ。
港区六本木のギャラリー「IMA CONCEPT STORE」で、コンテンポラリーフォトグラファー・西野壮平氏の個展「Action Drawing:Diorama Maps and New Work」が開催されている。会場では「Diorama Map」と「Day Drawing」の2つのシリーズの展示と、2015年11月に発売された写真集『TOKYO』(IMA PHOTOBOOKS)が販売されている。
会期中は在廊しながら作る
アクション・ドローイング
西野氏は、12年にわたって世界各地の都市を歩き、その土地ごとの地図を作ってきた。ニューヨークやベルリン、アムステルダム、リオデジャネイロ。そうして撮影された写真は、現像後にコンタクトシートから切り離され、真っ白なキャンパスにコラージュされて地図になる。川には船が浮かび、繁華街には人が溢れている。地図上の、まさにその場所で撮影された写真が、幾重にも貼られてひとつの地図になる様は、情報以上の景色を私たちに見せてくれる。
本展では、「Action Drawing」というタイトルのとおり、作品の展示だけでなく、西野氏自身が在廊しながら作品製作を行っている。通常はアトリエで制作を行っているが、今回はインスタレーションとして制作風景を公開しているという。今回制作しているのはハバナの街の「Diorama Map」だ。
ギャラリー中央に座る西野氏の周りには、これから地図になっていく写真が置いてある。写真を選びとる、その動きを身近で眺めることで、氏がどのように街を捉えているのかを感じ取れるかもしれない。
次は2024年
東京の風景をアーカイブする
展示している作品の中には、東京をモチーフにした作品が多く見受けられる。2004年の東京と2014年の東京。その大きなコラージュを眺めていると、東京の10年の変化が立ち上がってくるようだ。
東京をモチーフに選ぶ理由について尋ねてみた。
「東京という街は、日本の中で最も発展している場所です。もちろん自分自身が住んでいるということもありますが、変化が速い都市だと思うんです。2004年の東京を撮ったあとで、10年後に2014年の東京を撮りました。さらに10年後、2024年の東京も撮ろうと思っています。2024年というと東京オリンピック後ですから、きっと東京の風景は相当変わっていると思うんです。それだけでなく、自分の東京に対する捉え方も変わっていると思う。そういう意味でも、東京を撮り続けることでひとつの記録ができるだろうなと思っています」
GPSで出来た、光の足跡
「Day Drawing」
こうした一連の「Diorama Map」のほかに、新シリーズ「Day Drawing」も見逃せない。
この光は、移動することをテーマに西野氏が行っている日々の足跡を記録した写真作品である。GPSを用いて移動を記録、その1日の線のデータを透過性のある黒い紙にトレースし、その線に沿って小さな穴をあけていく、そしてその紙の後ろからペンライトを照らし穴から漏れた光をカメラで撮影したものだという。
街に潜って写真を撮り、俯瞰しながら再構築を施す「Diorama Map」と、GPSという人工衛星を用いて、空からダイレクトに軌跡を追った「Day Drawing」。それぞれの距離で街を捉える西野氏の視点が面白い。
現在発売中の雑誌『IMA』最新号では、巻頭で西野氏の作品を取り上げている。こちらも会場で発売中だ。それぞれの作品を鑑賞するだけでなく、インスタレーションによって作家の息遣いが間近に感じられる本イベント。ひとつの街が生み出される貴重な過程を、ぜひ味わってみてほしい。
Action Drawing: Diorama Maps and New Work
会期:2015年11月26日(木)〜2016年01月17日(日)
会場:IMA CONCEPT STORE
場所:港区六本木5-17-1 AXISビル3F
営業時間:11:00〜19:00(日・月・祝休)
TEL:03-5572-7144
URL:http://imaonline.jp/library/exhibitions/action-drawing:-diorama-maps-and-new-work/
[関連イベント]
■西野壮平とつくる「World Mapping」
開催期間:2015年12月26日 14:00~16:00、2016年1月16日 11:00~16:00、1月17日 11:00~19:00
申し込み締切:2015年12月25日(金)
主催者:IMA CONCEPT STORE
フォトグラファー:西野壮平
URL:http://imaconceptstore.jp/ud/event/564d34f9b31ac94463000002