東京メトロは、新橋駅、溜池山王駅、赤坂見附駅の3駅を対象に、駅デザインのコンペを行う「ビジネスエリア駅デザインコンペ」の発表を行った。

現在は使用されていない”幻のホーム”(公式サイトより)
本コンペは、2017年に開業90周年を迎える銀座線のリニューアルプロジェクトの一環として行われるもの。駅のデザインを公募する「駅デザイン部門」と新橋駅「幻のホーム活用アイデア部門」の2部門を設け、広く一般からのアイデアを募集する。公式サイトに要項が掲載されており、現在エントリー受付中。受付締切は2015年12月22日(火)17時まで。
8ヶ月しか使用されなかった
新橋駅のもうひとつのホーム
「幻のホーム活用アイデア部門」では、新橋駅にある”幻のホーム”を活用するためのアイデアを募る。このホームは戦前、「東京地下鉄道」と「東京高速鉄道」のふたつの民間鉄道会社が存在した時代の遺産だ。

直通運転がスタートした当時の新橋駅ホーム。(公式サイトより)
銀座線は、1927年(昭和2)に東洋初の地下鉄として上野〜浅草間に開業した「東京地下鉄道」がその祖となっている。路線を伸ばし、1934年(昭和9)には銀座〜新橋間を開通させた。
他方「東京高速鉄道」は、「東京地下鉄道」の創業から7年後の1934年に設立された。経営の実権を握るのは現・東急電鉄の創始者である五島慶太氏。五島氏は周辺の鉄道会社を次々と買収し、一大鉄道帝国を築いた。その足跡は、現在の東急グループを見れば明らかだ。

武蔵電鉄や池上電気鉄道を次々と買収した五島慶太(1882〜1959年)。
「東京高速鉄道」は渋谷から虎ノ門を経て新橋へ路線を走らせ、すでに「東京地下鉄道」が敷いていた上野〜新橋の路線との直通運転を狙った。両社は1935年(昭和10)に直通運転の契約を取り交わしたが、経営権をめぐる争いが起こり、すぐには両区間を繋げることができなかった。そこで1939年(昭和14)1月、「東京高速鉄道」はもうひとつの新橋駅を完成させ、この駅を使って電車が通過できるようにしたのだ。
両社の争いは内務省が調停を行うまでに発展し、ようやく同年9月に相互乗り入れがスタート。そして従来の新橋駅を使うこととなり、新設されたホームはわずか8ヶ月をもって閉鎖されたのである。

渋谷から浅草までの直通運転を知らせる広告。(公式サイトより)
現在この幻のホームは、駅員の休憩所などの施設を設置して使用されている。1993年に公開された映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』の中では、この幻のホームが朽ちた地下空間として登場するが、地下鉄開業70周年を迎えた1997年に大掃除とリニューアルを行ったこともあり、現在に至るまで綺麗な内観が保たれている。
誰でも応募できるコンペ
2022年の完成を目指して
2012年にスタートし、今回が第4弾となるこのコンペ。第1弾「下町エリア」(浅草〜神田)、第2弾「商業エリア」(三越前〜京橋)、第3弾「銀座」と、それぞれの区間ごとにデザインコンペを実施してきた。それぞれのアーカイヴは公式サイトから確認できる。リニューアルは駅ごとに段階を経て実施し、2022年には全駅のリニューアルが完成するという。

左から、第3弾「銀座」、第2弾「商業エリア」、第1弾「下町エリア」の受賞作品。(公式サイトより)
“幻のホーム”は、東京の地下鉄の成り立ちについて考えさせてくれる。地下で複雑に絡み合う路線に思いを馳せつつ、歴史ある建造物の新たな活用法を提案してみてはどうだろうか。
東京メトロ銀座線
ビジネスエリア駅デザインコンペ
応募要項など詳細はURLを参照。
URL:http://tokyometro-competition.jp/