仙台出身の創業者が会社を開いてから54年。山梨に工場と店舗を持つ「納豆工房せんだい屋」は、県外には世田谷区内のみに2店舗を展開をしている。根強いファンが多く存在するのは、素人でもはっきりとわかる納豆そのもののうまさはもちろん、納豆ペーストを活用したソフトな口当たりのドーナッツや、おつまみ納豆などのオリジナル商品の開発に力を入れていることもポイント。ドーナッツに至っては、社長が季節ごとに新たな味を展開していくほどの力の入れようぶりだ。
そんなせんだい屋だが、最も注目を集めているのが池尻大橋店のイートインコーナーで提供されている、「納豆食べ放題定食」。全部で8種類の同社オリジナル納豆を思う存分食べることのできるこの定食を体験し、同店店長に取材を刊行した。(※この記事は、2015年7月発売の雑誌『TOmagazine』の世田谷区特集号〈上編〉からの転載になります)
山梨の納豆メーカーが
世田谷区に進出した理由
田園都市線池尻大橋駅から、国道246号線を西に五分ほど進んだ場所に納豆専門店・納豆工房せんだい屋の池尻大橋店はある。本社の所在地は山梨県笛吹市。メーカーの強みを活かした特色ある納豆が人気を集めており、県外では下北沢店とここ池尻大橋店という世田谷区内のみに店舗を展開しているのだ。池尻大橋店では自社商品の販売の他に、イートインを設け、様々なメニューを展開していると聞き、お客さんで賑わうランチタイムにお邪魔した。
「もともと工場から様々なお店に卸すほか、直売もやっていました。そんな折、社長の、気軽に納豆を食べられる場所をつくりたい、という思いからここ池尻大橋店をオープンすることになったんですよ。」
そう語るのは池尻大橋店店長の長塚悟史さん。もともと違う業界で働いていたのが、納豆の味に惚れ込んで、オープンから店長を務め今年で七年になるという。
店舗を見回すと、多様な品種の大豆を使った納豆はもちろん、納豆ドーナツや納豆バウムクーヘンなどのスイーツ、箱につめられたギフトなど様々な商品が並べられている。レジのすぐ手前に設けられた納豆ドーナツのコーナーには、プレーンやチョコといった定番のものから、きなこや抹茶あずきなどの和のシリーズ、夏レモンなど季節にあわせたものが並んでおり、納豆とともに買っていくお客さんが多い。
ほとんどの客層が注文する
納豆食べ放題定食
そんな中、一番人気という納豆食べ放題定食が運ばれてきた。小粒、大粒などの定番から、えだ豆納豆、わかめ納豆などの変わり種を含んだ、全8種類の納豆が790円というリーズナブルな価格で楽しめる。注文時には納豆は二パックが提供され、食べ終わるごとに追加オーダーをするシステムだ。ご飯の大盛りは無料のため、様々な種類の納豆ご飯を楽しみたい人は大盛りを選ぶのが正解。
ちなみにこれまで最も納豆を食べた記録は、男性37パック、女性20パックとのこと。納豆ファンの食欲、恐ろしや……。そんな前情報を前に、まずは定番の「国産小粒」と変わり種の「ひじき納豆」をチョイス。適度に混ぜた後にネギとタレを加え口に運ぶと、素人でもはっきりとわかるその豆の味の濃さにまず驚いた。これまで納豆と言えば、ご飯とともに流し込むように食べていたものだが、噛めば噛むほどに大豆の持つ旨味が感じられ、ずっと口にしていたくなるのだ。
聞けば、大豆は北海道、山梨、長野産のよりすぐりを使っているとのこと。工場から商品が届くと店舗で味と粘りをチェックし、出来が悪ければ販売を中止することもあるそうだ。「品質の悪い商品が出た釜は徹底的にチェックをしています。そういう意味で、現場の方には頭があがらないですね」と長塚店長。川上から川下まで自社で把握できるからこその、厳しい品質基準なのだろう。
とはいえ、それほど食べ方にバリエーションがあるとは思えないのが納豆。長塚さんにお勧めの食べ方を聞いた。
「玉ねぎのみじん切りとポン酢は、さわやかなのでおすすめですね。あとはめんつゆで混ぜ、トマト、オリーブオイル、バジルを混ぜたもの。これはどんなお酒にも合ういいツマミになります。あ 、でも赤ワインだけは絶対ダメです! これだけは納豆に合いません!」
なるほど。すでにお腹はいっぱいだが、どれも試してみたい……。気がつけば、ツマミに最適だという緑豆大豆を使った「富士の秘伝」を手にレジに並び、どこかでポン酢を買って岐路につこうとしていた。
納豆工房せんだい屋 池尻大橋店
住所:東京都世田谷区池尻3‐20‐3
電話:03-5431-3935
URL:http://www.sendainatto.jp/