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週3日しか営業しないパン屋 淡島交差点裏<藤屋製パン>のパンがおいしい理由

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2015年10月2日
週3日しか営業しないパン屋 淡島交差点裏<藤屋製パン>のパンがおいしい理由
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写真_鈴木渉、文_編集部

パン王国・世田谷区。その実態については、TOmagazine世田谷区特集号「パンの未来は世田谷にある 〜パンラボ池田浩明による世田谷パン論〜」で特集した通りだが、まだまだ多くの魅力的なパン店が存在する。

当編集部では、2015年10月3日(土)、4日(日)に世田谷区池尻で開催される「世田谷パン祭り2015」に際し、「東京パンMAP〜世田谷区編2015〜」(300円)を制作。世田谷のパン屋を取り上げた特製MAPで、会場で販売する。本記事はそのうちのコラムを1つ抜粋し、加筆したものである。

木、金、土の朝7:30
<藤屋製パン>開店

 最寄り駅はと聞かれれば、おそらく池ノ上駅と三軒茶屋の間ということになるだろう。どちらからも歩いて15分ほど。淡島の交差点裏に伸びる緑道沿いに佇むのが、「藤屋製パン」だ。週に3日しか営業しないその店には、開店の7:30からひっきりなしに地元客が詰めかける。

レジ横には、調理パンのベースとなるコッペパンがどっさり。

レジ横には、調理パンのベースとなるコッペパンがどっさり。

レジの後ろでも調理パンを作ったり、食パンをスライスしたり。右手に工房がある。

レジの後ろでも調理パンを作ったり、食パンをスライスしたり。右手に工房がある。

店内にはソフト系からハード系までずらり。香ばしい香りが漂う。

店内にはソフト系からハード系までずらり。香ばしい香りが漂う。

 レジに立ち、テキパキと売り場を切り盛りするのは山口とよこさんだ。会計からパンのカット、予約のチェックまで、華麗なさばく姿はとても1935年(昭和10年)生まれとは思えない。

「パン屋の仕事は大変だよ。準備で夜中に起きることもあるんだから。でもね、息子やパートさんが助けてくれてる。だからやっていけてるの」

 とよこさんは愛知県で生まれ、若くして東京にやってきた。そして縁故採用で東京に出てきたご主人と結婚。ご主人がパン屋を立ち上げてからは、ここ淡島でずっと店を切り盛りしてきた。

「藤屋は桜新町に本社があってね、いちばん多いときで20店舗。旦那はそこで修行して、この店を開けたの」

あああ

本来本来焼きそばがメインであるはずの焼きそばパンだが、コッペパンの味わいも素晴らしい。

 週3日営業は少人数での運営だからこそ。体調を配慮し、自分たちでできる範囲でお店を開けている。

店を継いで23年
サラリーマンからパン屋へ

 工房でパンを焼くのは息子の山口誠二さんだ。1991年に先代が突然亡くなり、会社務めをやめて後を継いだ。それまでパンを作ったことはなかったという。

「親父が亡くなって、急遽家に戻ったんです。それでパン屋を継ごうと決めて、1年店を閉めて修行することにしました」

 サラリーマンからパン屋へ。生活スタイルは180度変わった。辛いとは思わなかったのだろうか。誠二さんは生地をこねながら笑う。

「プレッシャーはすごくあります。全部自分に責任がありますから。ただ、すごく楽しいんです。出来上がるパンの質は毎日変わる。そのへんまで含めて、すごく楽しいんですよ」

 藤屋のパンはバターも卵も使用していない。しかしひとたび口に入れれば、ふっくらと歯ごたえのある生地に驚く。

「最初はイースト菌で作ってたんですけど、徐々にホシノ天然酵母に変えたんです。今は食パン以外全部そうです。食感は全然違いますし、やっぱり美味しいんですよ。」

素朴な味わいが人気の「日本の田舎パン」。

素朴な味わいが人気の「日本の田舎パン」。

店内は次第にパンで埋まっていく。

店内は次第にパンで埋まっていく。

 工房の中央で生地をこね、数種類のパンを順に作っていく。一度に全てのパンを作ることはできないので、パンは工房から時間差で出てくる。とよこさんは言う。

「お客さんは全部わかってくれてる。だからちょっと時間がかかっても待っててくれるんだよね」

「パンはていねいに作らなくちゃダメ。」

 店内には食パンがごろごろと置かれている。その多くは予約ですぐ売り切れてしまう。お客さんが引き取りにくれば、とよこさんはそれをスライスし、間に紙を敷いて手際よく袋に入れていく。

出荷を待つ食パンたち。この下に予約伝票が差し込まれて行く。

出荷を待つ食パンたち。この下に予約伝票が差し込まれて行く。

スライスしたパンは、交互に紙を挟んでお渡し。

スライスしたパンは、交互に紙を挟んでお渡し。

 レジの合間には総菜パンも作る。おすすめだという「カラシ」はとよこさん曰く「他にはあんまりないんじゃない?」。千切りキャベツとカラシをあえてコッペパンに挟んでおり、コッペパンのふくふくとした生地と、少しピリ辛の具材が絶妙な一品だ。

ボウルいっぱいに「カラシ」のタネを仕込む。

ボウルいっぱいに「カラシ」のタネを仕込む。

「ちょっと待ってて。作ってあげるから」と、これから並ぶ前の「カラシ」を1つ作っていただいた。

「ちょっと待ってて。作ってあげるから」と、これから並ぶ前の「カラシ」を1つ作っていただいた。

 そうこうするうちに、三角巾をしたパートさんが忙しく店内を動き回り、店内にはパンが揃ってきた。食パン、くるみパン、やきそばパン、たまごサンド、ツナサンド、クロワッサン、チョココロネ……。その間にも予約確認の電話がなる。お客さんがやってきて、とよこさんに話しかける。

「私こないだ、お神輿担いじゃった。このへんももうすぐお祭りじゃないの?」

「えっ、そうだっけ。もう忙しくて日にちがわかんなくなっちゃったよ」

緑道沿いに佇む藤屋。

緑道沿いに佇む藤屋。

 お客さんひとりひとりと歯切れのいい会話をポンポンと交わすとよこさん。店には笑い声が耐えない。藤屋の毎日は、こうして淡々と続いていく。慌てず、急がず。全てはおいしいパンのために、目の前のことをひとつずつ、粛々と行うだけだ。その積み重ねが今日のパンを作る。

「大変なことかもしれないけどね、それでも、パンはていねいに作らなきゃダメ。手を抜いちゃダメ。いい材料で、ていねいにね」

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