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祭りが生まれる時:下町のレイヴ、錦糸町河内音頭大盆踊りが鳴らすビート

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祭りが生まれる時:下町のレイヴ、錦糸町河内音頭大盆踊りが鳴らすビート
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2015年8月26日
祭りが生まれる時:下町のレイヴ、錦糸町河内音頭大盆踊りが鳴らすビート
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取材・文_磯部涼、飯田ネオ/写真_松本昇大、三宅祐介/写真提供_鷲巣功、飯田俊/編集_飯田ネオ
新旧が織りなす町

いつの間にか、過去へとタイムスリップしてしまったのではないか。そんなことを妄想してしまうほど、タクシーの外の暗闇は木造家屋ばかりになっていた。

そして、道に不慣れな運転手が、ようやく、迷路を思わせる住宅街を抜け、大通りに出た瞬間、上部を濃霧に覆い隠され、まるで、天に突き刺さったかのように見える、紫色に光る高い塔が、真っ暗な空と濡れたアスファルトを染め上げる姿が目に飛び込んで来て、息を飲んでしまった。やはり、この光景こそが、様々な意味で現在の墨田区の象徴なのだろう。

紫色に光った高い塔は言うまでもなく東京スカイツリーであるわけだが、同施設のデザインのテーマは「日本の伝統美と近未来的デザインの融合」だそうだ。しかし、その“古いもの”と“新しいもの”の融合というコンセプトは、2020年のオリンピックに向けて再開発が進む東京において、懐かしい下町が体験出来るテーマ・パークとして注目を集める一方、首都直下型地震が起こった際に、最も倒壊と火災の被害が大きくなると予測される古い街並を抱える、墨田区の課題をも示唆している。

とは言え、この街が、以前よりそういった様々な問題と向き合いながら、ダイナミズムをつくり出してきたのもまた事実だ。例えば、「錦糸町河内音頭」もそのひとつである。1982年、好景気を背景に都市が目紛しく変わっていく中で遅れを取っていた墨田区錦糸町が、“河内音頭”という外部の文化を取り入れて街に活気を取り戻そうとした試みは、33年を経て、何処へ行き着いたのか。

京島の集会所で行われていた河内音頭練習会から、打ち上げのためのスナックへと急ぐタクシーの中で、錦糸町と河内音頭の歴史を丸ごと体験した50代の女性の話を聞きながら考えていた。

2008年に発足したすみだ河内音頭同好会。月に1回の自主練習のあとは、墨田区内のスナック「旅路」で踊り明かす。

2008年に発足したすみだ河内音頭同好会。月に1回の自主練習のあとは、墨田区内のスナック「旅路」で踊り明かす。

「父が大の河内音頭狂いだったんです」

彼女は言う。

「夏になると、必ず手製の地図を持って、櫓を回っていた。私はそれが嫌で嫌で。当時、河内音頭は地元の若い人の間では恥ずかしいものとされていましたから」

しかし、そんな父親が癌で倒れてしまう。

「最後の夏、どうしても音頭場に行きたいと言って聞かないので、車椅子を押して連れていったんです。そうしたら、踊りたくなってしまったみたいで、“雪駄を持ってこい!”って。櫓にフラフラと向かって行く後ろ姿が今も目に焼き付いています」

やがて、彼女は墨田区両国に嫁ぐことになる。

「ある日、隣駅の錦糸町ダービー通りで河内音頭をやるって聞いてね。懐かしくなって行ってみたんです。“あの辺はガラが悪いから”って夫が付いてきてくれました」

振興隊が計画した河内音頭の東京上陸作戦は82年に実現する。7月20日、まずは、渋谷のライヴ・ハウス「LIVE INN」で河内音頭の三音会と、サルサ・バンドのオルケスタ・デル・ソルのツーマンが、翌日、錦糸町ダービー通りのパチンコ店「銀星」2階にあるイベント・スペース「銀星劇場」を使って三音会の単独公演が、行われた。

「そこから、ハマってしまってねぇ。毎年、錦糸町の河内音頭にも必ず通っていますし、夏は何回も里帰りして櫓を回っているんです。弟には“あんなに嫌がっていたのに、親父の血を継いだんだなぁ”って笑われてます」。

 

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