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吉原で知る日本の性風俗史 “お歯黒どぶ”の縁でカストリ書房が伝えたいこと(台東区)

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吉原で知る日本の性風俗史 “お歯黒どぶ”の縁でカストリ書房が伝えたいこと(台東区)
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2017年9月29日
吉原で知る日本の性風俗史 “お歯黒どぶ”の縁でカストリ書房が伝えたいこと(台東区)
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文・写真:編集部
風俗史は「社会的に意味がある」

希少本に興味を持つのは若者たちだという。生まれる前の性にまつわるカルチャーは、自分たちとまるで同じこともあれば、まるで違うこともあったりと様々で、その時代を生きていないものには新鮮に映る。「面白い」からさらに見識を深めてもらうために、渡辺さんは思いをめぐらせる。

「ただ置いてあるだけでは意味がないと思っています。その本にはこういう背景があるんですよと説明をすることで、補完できるというか。そうやって僕のほうからお話することで、こういう本は社会的に意味があるんだよ、ということを伝えていかないといけないと思っています」

戦後、売春防止法が施行され赤線が廃止になった。風俗営業法も年々取り締まりが強化され、徐々に性風俗にまつわる施設は街中から消えつつある。それに対して意を唱えるわけではない。ただ、かつて存在した俗な街場のなかに、時代を生きる人々の息遣いがあったのもまた事実であり、そこから学ぶ歴史は政治史や経済史とは違った手触りがある。こうした本の希少性について、少しでも理解を深めてもらいたいというのが渡辺さんの切なる願いだ。

店の前の道を行くと角海老が見えるのもまた風情。

拡張するカストリ書房

「もうすこしで連れ込み宿の見学会をやりますよ」と渡辺さんが教えてくれた。近所にある元連れ込み宿のアパートの見学ができる機会ができたので、イベントにしたのらしい。3日間の開催ですでに150人を越える申込みがあったため、すでに募集は打ち切られていた。女性だけの遊郭飲み会の企画も構想中だという。

廓(くるわ)ではなく厠(かわや)だった。

「今までやってきたジャンル以外で収益をあげるのは重要なことですから」

渡辺さんはしばしば、経営に対する考えをしっかりと口に出す。本屋運営は並大抵の覚悟ではつとまらない。吉原という地の利があり、性風俗という強力なカルチャーの下支えを受けながらも、その道のりはまだまだ険しい。カストリ書房は複合書店のようにあらゆる本を取り扱えないが、「専門書店」の看板を掲げていることが大きな強みだと渡辺さんは言う。

「例えばこの本はコミケを中心に売られていた本なんですけど、うちのような店でこそ売る意味があるのかなって」

『喪失廃墟物語7 遊郭吾妻家編』は、千葉県船橋市の海神遊廓にあった妓楼、吾妻家内部を撮影した写真集とストーリーで綴られる作品。これまでコミケなどで頒布されていたが、カストリ書房での発売が初の書店流通となった。やりたいことを少しずつ形にする。そのためにはインターネットを存分に活用するし、クラウドファンディングも巧みに取り入れる。

「吉原という点だけで終わらず、山谷にも浅草にもアクセスできる。そのふたつのカルチャーの、ちょうど中間地点にあるというのが大きいですね」

山谷、吉原、そして浅草寺周辺を思い浮かべたとき、その風景は少しずつ違って見える。しかし江戸時代、日本橋から移転した新吉原へ向かう際、男たちは賑わう浅草寺周辺の人目を避け、隅田川を船でのぼり、山谷堀を下る形で吉原大門を目指したという。それが粋な道程だった。カストリ書房を中心に、台東区のそんな歴史に思いを馳せてみると、山谷も吉原も浅草もまた違う表情に見えてくる。

2年目のカストリ書房は、新天地“お歯黒どぶ”の掘の縁で、新たなスタートを切った。

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