〈片想い〉〈ザ・なつやすみバンド〉で活躍、無類の角打ちマニアとしても知られるミュージシャン、MC.sirafuことmantaschool。彼が主催する角打ちDJイベント「角打ち ON THE CORNER」の2回目が、6月17日(土)上野萬屋酒店にて開催された。酒屋の店先で酒を呑ませる「角打ち」で、なぜDJによるパーティが開催されたのか? 昼間から楽しい酔客が集った当日の模様をレポートする。
梅雨の合間にカラッと晴れ渡った、まさに昼ビール日和な土曜日の午後。東上野にある上野萬屋酒舗にて、角打ちDJイベント「角打ち ON THE CORNER」が開催された。
MOODMAN、やけのはら、角張渉(カクバリズム)らがDJとして参加したこのイベント、開催されるのは今回で2度目(1回目は今年3月、神泉にあるクラフトビールの品揃えが豊富な角打ち「平野屋商店」にて行われた)。企画したのは〈片想い〉や〈ザ・なつやすみバンド〉のメンバーとしても活躍するミュージシャン=MC.sirafuことmantaschool。
数年前より角打ちの魅力にとりつかれ、今では角打ち以外では酒を呑まないという徹底ぶりのマニアだ。ついには角打ちに関するコラムまで書くようになった彼が呑み歩きする日々の中で出会ったのが、この上野萬屋酒舗だった。
知らずに始めた「角打ち」
御徒町駅や田原町駅から数分歩いた場所にあるこの店は90年以上にわたる歴史を持ち、現在も配達を主体に営業を続ける酒販店だ。多くの酒屋がそうだったように、昔はここも店先で客に酒を呑ませていたが、(客が酔っ払うのがイメージ的によろしくないということもあり)長らく角打ち営業は辞めていたのだという。
この店に生まれ育った姉妹2人が、倉庫・車庫としても使われてきた店先を使って角打ち営業を再開したのは2年ほど前から。といっても娘さんたちは、酒屋が店先で酒を呑ませることを「角打ち」というのも知らず、ただ「若い人にちゃんとしたビールの味を知ってほしい」と、美味しい酒をカジュアルに楽しんでもらえる場所としてこのスペースを再利用しはじめたのがきっかけだったというから面白い。
平日の昼下がりから宵の口までの短い営業時間ながら、サーバーを丁寧に手入れしたこだわりの生ビールや、キリッとした飲み口の角ハイボール、そして手作りの牛たんシチューや餃子などのおつまみメニューを目当てに、近隣で働くサラリーマンはもちろん、噂を聞きつけた呑んべえも遠方から足を運ぶ、下町のオアシスとして定着しつつある。
幾度となく上野萬屋酒舗に通っては立ち呑みしていたmantaschoolは、シュルレアリスムな絵が大きな壁一面に描かれた開放感のあるこのスペースに大きな可能性を感じて、この場所でDJイベント「角打ち ON THE CORNER」を開催することを思いつき、店主姉妹への交渉がはじまった。
MOODMAN:僕もシラフくんと何度か一緒に打ち合わせに行ったんですけど、「本当にこの人がお客さん呼べるの?」ってシラフくんがだいぶ訝しがられてて。だから僕はちょっとサラリーマンっぽい格好で行って「大丈夫ですよ」って安心させる役回りで説得にまわりました(笑)。
お店を説得し、ご近所さんへの挨拶まわりも済ませて、いよいよイベント当日となった6月17日。ビールケースを積み上げて作ったDJブースに、メンバーの私物を持ち込んだというサウンドシステムも組み立てられ(大きなウーハーが入って、音質も素晴らしい!)、角打ちパーティはスタート。昼12時からの開催ながら多くの人で賑わった。