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東京イチの危険地帯墨田区から考える東京の災害(後編)

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東京イチの危険地帯墨田区から考える東京の災害(後編)
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2016年9月1日
東京イチの危険地帯墨田区から考える東京の災害(後編)
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文_江口晋太朗、写真_山本正大、イラスト_大川久志、編集_桜井祐
「ふじのきさん家」に見る木造建築の耐震・耐火対策

昔ながらの趣を感じる場所としての魅力がある反面、災害に対してとてつもなく脆いという弱点がある木造密集地域。古きよき時代を映しだしたその姿は、墨田の光と影を、表裏一体で見せる場所でもある。そんな木造建築を今のままの姿を残しつつ、災害に強くするために有効なのが、耐震・耐火対策だ。先の文でも紹介した通り、墨田区には防火・耐震化改修促進助成制度を実施しており、これを利用しない手はない。そこで、実際にはどんな施工を行うのか、最新の耐震工事を施した「ふじのきさん家」をモデルケースに見てよう。

墨田区耐震補強推進協議会協力のもと、2013年3月にできたコミュニティスペース。地域防災力の向上の拠 点として、NPO法人燃えない壊れないまち・すみだ 支援隊が運営している。住所:墨田区東向島2-4-3 TEL:03-6657-2300

墨田区耐震補強推進協議会協力のもと、2013年3月にできたコミュニティスペース。地域防災力の向上の拠 点として、NPO法人燃えない壊れないまち・すみだ 支援隊が運営している。(所在地:墨田区東向島2-4-3 TEL:03-6657-2300)

墨田区では、災害時の倒壊や火災の危険性が高い木造密集地域における災害対応力を高めるために、30年以上前から耐震に対するさまざまな取り組みを行ってきた。東日本大震災などによって災害への意識がさらに高まったこともあり、2013年から防火・耐震化改修促進事業という新たな取り組みをスタートさせた。その一環として建てられたのが「ふじのきさん家」だ。

耐震補強で一般的なのが、壁の柱や梁にブレースと呼ばれる支えを入れる「筋交い」。柱を斜めに補強することで、強い外圧がかかっても倒壊しにくい構造になる。ふじのきさん家の2階壁の一部はスケルトンになっており、筋交いで補強している様子を見ることができる。

耐震補強で一般的なのが、壁の柱や梁にブレースと呼ばれる支えを入れる「筋交い」。柱を斜めに補強することで、強い外圧がかかっても倒壊しにくい構造になる。ふじのきさん家の2階壁の一部はスケルトンになっており、筋交いで補強している様子を見ることができる。費用の概算:壁と柱の補強/15〜25万円(壁1間=182cmあたり)

ふじのきさん家では、外壁を石膏ボードにすることで、火災が起きても45分間は燃えない基準を満たした、準耐火構造が施されている。さらに、壁王という最新の耐震補強壁工法で、既存の家の外側から直接壁に取り付けができるため、住みながらでも工事が可能だ。

ふじのきさん家では、外壁を石膏ボードにすることで、火災が起きても45分間は燃えない基準を満たした、準耐火構造が施されている。さらに、壁王という最新の耐震補強壁工法で、既存の家の外側から直接壁に取り付けができるため、住みながらでも工事が可能だ。費用の概算:壁の耐火対策/200〜400万円(一軒家すべての壁を改修した場合)

「この建物は行政だけでなく企業や大学、地域の工務店などが連携し、木造住宅に必要な防火・耐震改修の技術を結集させたケーススタディモデルの建物なんです」

そう語るのは、墨田区都市計画部防災まちづくり課不燃化・耐震化担当主事の秋末英樹さん。この改修促進事業の柱として、区は100万円の改修助成を用意している。しかし、実は防火・耐震化改修の助成金実績はいまだゼロ。なぜなら、現在の制度では延焼を抑え避難路や避難地を確保するために、大通りに面した建物だけが助成の対象となっている一方、区役所に改修助成を問い合わせる住民の多くは、木造密集地域の人たちなので、今までの助成金対象には、該当しなかったのだ。そこで、2015年から助成対象区域を一気に拡大。木造密集地域でも耐火・耐震改修の助成を行えるようにするなど、助成制度の拡充を予定している。

玄関の壁に耐震開口フレームを仕込むことで、大きな窓や空間がある壁の耐震性を高め、揺れやねじれを抑えながら住宅の構造バランスを保つことが可能に。フレームには門型やL字型、BOX型などさまざまな形があるので、多様な住宅のニーズに対応することができる。

玄関の壁に耐震開口フレームを仕込むことで、大きな窓や空間がある壁の耐震性を高め、揺れやねじれを抑えながら住宅の構造バランスを保つことが可能に。フレームには門型やL字型、BOX型などさまざまな形があるので、多様な住宅のニーズに対応することができる。費用の概算:壁の耐震補強/20〜30万円。

既存の梁の下に補強用の梁を入れたり、土台と柱、梁と梁にL型メタルという補強用金具を入れたりすることでねじれ現象を防止。住宅によって補強箇所が変わっても、金具の組み合わせで柔軟に対応することができる。安価に耐震性を向上させるオーソドックスな方法。

既存の梁の下に補強用の梁を入れたり、土台と柱、梁と梁にL型メタルという補強用金具を入れたりすることでねじれ現象を防止。住宅によって補強箇所が変わっても、金具の組み合わせで柔軟に対応することができる。安価に耐震性を向上させるオーソドックスな方法。費用の概算:梁の耐震補強/30~40万円(金具10個取り付けの場合)

「見た目には頑丈そうな家でも、実は燃えやすい構造だったり、中を開けてみると柱にヒビが入っていたりすることも。それが倒壊の原因になることが多いのです。自分の家は大丈夫と思わず、積極的に区のサポートを活用してもらえるとうれしいです」

いざという時が起きてしまっては、後の祭りだ。自分は大丈夫と思わず、ぜひ区が行っている防災対策の取り組みを知り、助成などを有効活用しながら、安心安全な防火・耐震対策を行うべきだろう。

次のページ:災害を恐れながらも防災の実行動に移らない日本人

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