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東京イチの危険地帯墨田区から考える東京の災害(後編)

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東京イチの危険地帯墨田区から考える東京の災害(後編)
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2016年9月1日
東京イチの危険地帯墨田区から考える東京の災害(後編)
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文_江口晋太朗、写真_山本正大、イラスト_大川久志、編集_桜井祐

前回「東京イチの危険地帯 墨田区から考える東京の災害(前編)」では、墨田区の災害の歴史を紐解いた。後編では、墨田区の取り組みについて紹介する。(本記事は『TOmagazine墨田区特集号』に掲載された記事「そろそろちゃんと向き合いたい 災害のこと。」を再構成したものです)

木造密集地域が災害に弱いからといって、自治体や民間が何も対策を講じていなかったわけではない。特に墨田区は、自分たちの災害に対する弱さを知っているからこそ、高い防災意識とこれまでのノウハウをもとにした独自の取り組みを日々実践している。実は、墨田区は都内で最も先進的な防災実践地域でもあるのだ。そこで、ここからは墨田区がどんな防災への取り組みを行っているかを紹介しよう。どれも非常に意味のある取り組みであり、事前に知り、参加していれば、墨田区における暮らしが一層安全なものになることは間違いない。

公式防災情報アプリ「墨田区防災マップ」

墨田区役所が開発した、防災に関連する情報をスマートフォンやタブレット端末で閲覧できる無料のアプリ「墨田区防災マップ」。アプリ内にあるMAP機能を使えば、地図上で一時集合場所や避難場所、避難予定施設位置や現在地の最寄りの病院、AEDの設置場所を確認することができる。区が配布している防災ガイドの閲覧や東京都防災マップ、防災課のウェブサイトやTwitterなどにもアクセスすることが可能だ。利用者のターゲットとして、墨田区在住の人や墨田区へ通勤している人、外国人などを見込んでいるため、多言語に対応しているのもうれしいポイント。また、ネット通信環境がなくてもアプリを利用することができる頼もしいツールだ。災害時だけでなく、日常でも役立つ情報満載なので、事前にダウンロードして普段からの防災リテラシーを高めておくのが好ましい。

①AppstoreまたはGooglePlayから「墨田区防災アプリ」をダウンロード起動。②スマートホンの位置情報サービス設定をオンに③災害時には用途に従って利用!

①AppstoreまたはGooglePlayから「墨田区防災アプリ」をダウンロード起動。②スマートホンの位置情報サービス設定をオンに③災害時には用途に従って利用!

防火・耐震化改修促進助成制度

木造密集地域の多い墨田区は、建物の倒壊や火災の被害の危険性を減らして災害に強い「燃えない・壊れないまち」を目指している。そのために木造建築物の不燃化や防火・耐震化改修の助成や補助を積極的に行っている東京都内でも珍しい区だ。2013年から新たに始まった防火・耐震改修促進事業では、工事費の一部を負担する形で最大100万円の助成が受けられる制度もある。他にも、適切な耐震化改修を行うための耐震診断サポートや、耐震化の進め方が分からない人向けに建て替え方法や助成制度の相談窓口対応をしてくれる「まちづくりのコンシェルジュ」という頼もしい存在もいる。まずは、相談することから災害に対する備えを整えてみよう。

①墨田区都市計画部防災まちづくり課不燃化・耐震化担当に相談!②「民間建築物耐震診断助成」を申請。耐震診断を受ける③改修が必要と判断されれば、「防火・耐震化改修促進助成」を申請④地震・火事に備える!

①墨田区都市計画部防災まちづくり課不燃化・耐震化担当に相談!②「民間建築物耐震診断助成」を申請。耐震診断を受ける③改修が必要と判断されれば、「防火・耐震化改修促進助成」を申請④地震・火事に備える!

路地尊に天水尊。雨水の積極活用

墨田区を歩くと、街中で「路地尊」と書かれたタンクをいくつも発見できる。これは、雨水を利用した貯水タンクだ。近隣の屋根に降った雨を集水して地下のタンクに貯め、手押しポンプで水を流す仕組みとなっている。その路地尊の元祖が「天水尊」。1994年に墨田区出身の徳永暢男さんが個人宅の雨水利用のために開発したことが始まりで、その後全国に広まった。雨水を有効活用し、かつ、いつどんな時でも気軽に水を使える便利な路地尊。普段は生活用水のための水汲み場や井戸端会議の場所といった、日々の生活に根付いた空間の一つとして、区民に愛されている場所でもあるのだ。

①定期的に近所の天水尊・路地尊周辺を掃除②打ち水や家庭菜園、植木鉢などの世話用に、天水尊・路地尊の雨水を利用③日常的に利用して使用法&設置場所をマスターし、火災発生時に備える!

①定期的に近所の天水尊・路地尊周辺を掃除②打ち水や家庭菜園、植木鉢などの世話用に、天水尊・路地尊の雨水を利用③日常的に利用して使用法&設置場所をマスターし、火災発生時に備える!

毎月1日の防災訓練

全国的に、関東大震災が起きた9月1日は「防災の日」とされ、この日を中心に防災訓練などが日本中のあちらこちらで行われている。しかし、年一回の防災訓練だけでは、いざという時に行動できるか心配だ。そこで、墨田では毎月1日を「墨田区防災の日」と独自に定め、防災に関するさまざまな取り組みを行っている。防災訓練だけではなく、月ごとにテーマを決めて身の回りの防災グッズや避難具、耐震設備の点検や防災関連のイベントを開催するなど、普段の防災力を高める実践的なものが行われている。危険な地域と言われているからこそ、防災に関する普段の意識を高くもち、実践的な活動を行っているのだ。

①毎月1日、昼の12時30分から防災行政無線で放送される防災標語に耳を向ける②各月、そのときどきに応じて教えてくれる防災内容をチェック③放送に従って、避難訓練や、防災グッズの点検などを行う!

①毎月1日、昼の12時30分から防災行政無線で放送される防災標語に耳を向ける②各月、そのときどきに応じて教えてくれる防災内容をチェック③放送に従って、避難訓練や、防災グッズの点検などを行う!

区内167箇所に配備されるスタンドパイプ

火災が発生しても、すぐに消化作業をすれば延焼を抑えることができる。しかし、災害時には建物の倒壊で道が塞がたりして、すぐに消防車が駆けつけてくれるとは限らない。そこで、一人でもすぐに消火作業ができるように開発されたのがスタンドパイプだ。これならば、小学生でも持ち上げることができるスタンドパイプを道路にある消火栓に指し込み、ホースをつなぐだけで簡単に消火が行うことが可能。道路の狭い地域や木造密集地域などを中心に、区内167箇所に配備されている。こうしたスタンドパイプや、消火器の使い方を覚えておくことが、墨田で生活するための必須条件と言えるかもしれない。

①近くの消防署に、スタンドパイプの使い方に関する実演解説を依頼②スタンドパイプの講習を受ける③万が一の火災に備える!

①近くの消防署に、スタンドパイプの使い方に関する実演解説を依頼②スタンドパイプの講習を受ける③万が一の火災に備える!

活発な地域の防災組織活動

災害に備えるためには、日頃からのご近所付き合いを含めた「地域コミュニティ作り」が必要だ。そこで、各町会や自治会が定期的に避難所である学校で集まりながら、防災活動や日頃の情報交換を行う場を作っている。災害時には区の災害対策本部と協力し、避難所運営を行う自主組織となるなどの、いざという時のための組織づくりだけではなく、お隣さんや地域の人たちとのネットワーク作りを通しや普段のつながりを大切にしている。地域防災活動拠点会議には、20代の夫婦から60代の人などさまざまな年代が参加しており、世代を越えてみんなで地域のことについて行動しようとする意識が浸透しているのだ。

①住んでいる地域の町会や自治会へあいさつにいく②町会や自治会主導による、防災組織活動について参加の意思を伝える③地域における防災の取り組みを考える!

①住んでいる地域の町会や自治会へあいさつにいく②町会や自治会主導による、防災組織活動について参加の意思を伝える③地域における防災の取り組みを考える!

次のページ:「ふじのきさん家」に見る木造建築の耐震・耐火対策

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