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西蒲田「第二日の出湯」がつなぐ、『ゴジラ』と『シン・ゴジラ』の時代

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西蒲田「第二日の出湯」がつなぐ、『ゴジラ』と『シン・ゴジラ』の時代
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2016年8月13日
西蒲田「第二日の出湯」がつなぐ、『ゴジラ』と『シン・ゴジラ』の時代
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写真_下屋敷和文、文_編集部
浴室で味わう巨大ゴジラと
大田区の街並み

浴室に入ると、巨大なゴジラがこちらを見下ろしていた。この壁画は銭湯絵師の田中みずきさんが描いたものだ。

「昔は絵師の早川利光さんに描いてもらってたんだけど、亡くなられてね。組合からは貴重な絵だから保存してほしいって言われてたんだけど、傷んでどうしようもなくなってしまって」

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当時、銭湯絵師は早川さんを含め日本で3名と言われていた。その早川さんが2009年に亡くなり、一時期は保存も考えたが、浴室という場所の特性上、数年で痛みが出てボロボロになってしまった。そんな折、新たな壁画を描いたのは絵師の中島盛夫さんだった。

「描き直しをしなくちゃ、というときに立山連峰の話があって、それでお願いしたんだよ」

富山市のPR事業として、都内数カ所の銭湯に立山連峰の壁画を描くというキャンペーンが2010年から行われていた。2012年、第3弾として都内5軒の銭湯が選ばれ、中島さんがこの「第二日の出湯」に立山連峰を描くことになった。そのとき、中島さんのアシスタントとしてやってきたのが弟子の田中さんだった。これを縁に、「第二日の出湯」では現在まで田中さんに壁画を描いてもらっているのだという。

「大田区の名所をたくさん入れて描いたみたいだよ。男湯と女湯、どっちからでも見えるけど、写真を撮るなら男湯側がいいかな」

田村さんのアドバイスに沿って撮影を始めると、ゴジラの足元には蒲田西口商店街のサンライズアーケードが見えた。流れているのは多摩川。東急プラザ蒲田の観覧車や、池上本門寺、羽田空港など、壁画には大田区の名所が詰め込まれていた。

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壁画の下に湧く湯は、キャンペーンのきっかけにもなった天然温泉の黒湯。アルカリの重曹泉で、フミン酸という有機成分が柔らかい湯を作り出す。美肌の湯としても人気が高い。

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今やどこの家庭にも風呂がある時代だが、それでも銭湯を求める客はいる。常連客が多いと、PRイベントを敬遠する店も少なくない。いつも訪れている場所が普段と違うモードになると、いつも来ている人たちが訪れにくくなってしまう可能性もある。大田区から打診を受けた際、断ろうとは思わなかったのだろうか。

「まあ、うちは撮影貸しもやってるし、大田区が色々やろうっていうんだから協力しようってね」

田村さんが少年の頃は、三社祭が地元でいまひとつ盛り上がっておらず、仲間と同好会を作ったこともあるのだそうだ。おそらく、昔も今も根っこの部分は変わっていないのだろう。しょうがねえな、と言いながらも、地域のためならひと肌脱いでしまう。実際のところゴジラ目当ての客もチラホラいるが、常連客も相変わらず訪れているそうで、「第二日の出湯」はゴジラとの共生をはかっている。

初代ゴジラの頃から変わらない場所

田村さんは、15時の営業開始までに湯船に湯を張る。露天風呂を沸かすための薪も割るし、たまには煙突も掃除する。嫁いだ娘が手伝ってくれることもあるというが、銭湯家業は決して楽なものではない。

「ばあさんふたりと俺の3人でやってるんだもん。平均年齢72歳なんだから。大変だよ。薪も割らなきゃいけないしさ」

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楽しみはたまの旅行だという。

「でも、どこか地方に出かけて風呂に入ると、ん?ここの湯は機械で沸かしてるな、とか分かっちゃうんだよね。困ったもんだよ」

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一通り撮影を終え、改めて浴室を見渡すと、鮮やかなゴジラ壁画と真っ青な壁、そしてクラシカルなタイル張りの浴室のコントラストが絶妙だった。それを伝えると、田村さんは言った。

「味があるでしょ。創業から変えてないからね」

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湯と水だけのシンプルな蛇口も、脱衣所から見える池も、1955年に誕生した時のままだという。初代『ゴジラ』が公開された1954年とほとんど同じ時代の空気のなかに2016年のゴジラが佇む光景は、なんとも趣き深いものがある。

「映画が終わるまではこのままにしてるよ。とりあえず9月はまだあるんじゃないかな」

ゴジラが見下ろす「第二日の出湯」では、ふたつの時代が交錯している。

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次のページ:大田区近郊で観る『シン・ゴジラ』

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