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東京でペットと逃げるには 「いっしょに逃げてもいいのかな?展」で学ぶ“同行避難”

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東京でペットと逃げるには 「いっしょに逃げてもいいのかな?展」で学ぶ“同行避難”
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2016年5月17日
東京でペットと逃げるには 「いっしょに逃げてもいいのかな?展」で学ぶ“同行避難”
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写真_下屋敷和文、文_編集部
クリエイターによる、
ペットと災害を考えたプロダクト

──平井先生にお話を聞いて「事前の準備がどれだけ必要か」ということの反面、まだまだできることがたくさんあるということもわかりました。今回はそうした思いも踏まえて、クリエイターの方々に同行避難や避難所の生活、飼っている動物のためにできること、というようなテーマでプロダクトをご提案いただきました。なお設計事務所imaさんと江口さんはこの展覧会よりも前からプロダクトを制作されていて、今回の展示にご参加いただいた形になります。

■小林恭+マナ(設計事務所ima)

マナ:動物はもともと好きだったんですが、東日本大震災の時に動物たちの置かれている状況を見て、どうなんだろうと。それで殺処分の問題も気になるようになって、福島の犬を1頭預かったり、シェルターでボランティアを始めたりしました。その時から同行避難のことは気になっていて、動物たちと一緒に逃げたいけれども、苦手な方もいる。そういう方と共存するために何かないかしら……と、ずっとこういうバッグを作りたいという思いがあったんです。

 「リュック型ペットキャリー GRAMP」(LEONIMAL/税抜き45,000円)8kgまでのペットが収容できる。

「リュック型ペットキャリー GRAMP」(LEONIMAL/税抜き45,000円)8kgまでのペットが収容できる。

お話をいただいてから、平井先生にアイディアを出してもらいながら制作をしました。色々機能を盛り込んでいて少し重いんですが、丈夫だし、アウトドアグッズを参考にしているので、背負うと背中にフィットするようになっているんです。色も、当初はシルバーやリフレクターを考えていたんですけが、避難時に使うには普段から部屋に置いて慣れてもらう必要がある。なので落ち着いた色になりました。避難所で吠えていたら出ていかなければいけないかもしれない。普段からケージトレーニングは大切だと思っているので、この中でごはんをあげたりして使ってもらいたいです。

設計事務所imaの小林恭さんとマナさん。

〈設計事務所ima〉の小林恭さんとマナさん。

小林:ケージを内蔵したいとか、ペットボトルが入れられて中でお水が飲めるようにしたいとか、平井先生から機能的な部分で「こうしたい」というのがたくさんあって、それをおさめていくのが大変ではありました(苦笑)。改良に改良を重ねたので、お話をいただいてから完成まで1年半ぐらい。制作の過程でいろいろな問題があったんですけど、パーツを工夫することによってなんとか収まるようにしています。 ポケットがあったり、チャックが片手で開けられるようになっていたり、 ケージの部分も棒を2本足してしっかり立つようになっているんです。

またいつ、どういう形で震災が起こるかわかりません。自分たちもネコを2匹とイヌを1匹飼っているので、その子たちと一緒に逃げられるようなものを作っていきたいと思っています。

_DSC0193

平井:キャリーバッグの内部は、汚れが目立たないように黒い色を使ったものが多くなりがちなんですが、先ほどもお話したように、ペットの爪が剥がれて出血しているような場合に、それがすぐわかったほうがいいと思うんですね。なのであえて汚れるのを覚悟で、「メディカルホワイト」という白い色にしていただきました。汚れたら洗えばいいですしね。

あと、このケージはネコの避難対策から発想しています。ネコは小さなキャリーバッグ内では長期間暮らせませんし、うっかりすると逃げてしまう。逃げたら捕まえづらい。なので、中からオアシスにアクセスできたり、開閉を最低限にできるように工夫をお願いしたんです。いろいろな思いを形にしていただいたことが、とても嬉しいです。

■江口理架(29design)

江口:私は東北大震災の時に、ペットグッズを取り扱う「FLAVOR.」というショップで働いていたんです。ショップのお客さんに宮城の方が多かったこともあって、実際に同行避難をするにあたって何が必要なのか、どういうものが欲しいのか、そのご意見をもとにこのモバイルハウスを作りました。

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「モバイルハウス」(29design/M 税込み29,160円/S 税込み24,840円)

畳んで持ち運ぶことができる。

畳んで持ち運ぶことができる。

ペットが避難所で緊張して目がチカチカしたり、息がハァハァしたりしてどうしようもない時に、囲われている小屋があれば興奮を抑えられるのではないかと考えました。1年ぐらい、サンプルを作りながらできた商品になります。被災された方にも実際に使っていただきました。入り口をガムテープで塞いで様子を見たら、興奮が収まるようになったという意見も活かしています。

普段はおうちで使っていただいて、側面を中に入れて板をぐっと押せば、5センチぐらいの厚さに畳めるので、そのまま外に持ち運ぶことができます。シンプルに、と思ってシナベニ材をそのまま使っていますが、ペットの名前を書いたり色を塗ったりしてアレンジして使ってもらえたらと思っています。

〈29design〉の江口理架さん。

〈29design〉の江口理架さん。マンション内のペットを飼っている方々と、非常時の避難場所や物資のシェアについて話し合っているという。

今回このパンフレットにも持ち物がたくさん書いてありますが、実際に被災した時にこのパンフレットを持っていけるかというとわからないですよね。ですから予めリストアップした避難用具を入り口にまとめて置いておくことも大切かなと思います。熊本地震もあって、震災について不安な方も多いと思うんですけど、寄り添って、意見を出し合って、助けあいながら動いていけたらいいなと思います。

──江口さんは今回のクリエイターさんの中で唯一ショップにお勤めだったので、ペットを飼っている方からのお話を聞く機会が多かったと思います。何か気になったご意見はありましたか?

江口:特に東日本大震災で意識が変わったと思うんですけど、以前はペットを入れて、手に持って移動するタイプのバッグが売れていたんですね。でもこの5年ぐらいの間に、両手が空くようなものが欲しいという意見がすごく増えました。皆さん逃げる時のことを常に考えていらっしゃるんだなというのをすごく実感しました。

平井:ネコをこの中に入れたら落ち着いたというのはわかります。避難所ってすごく音がするんですよ。視線がコントロールできて、落ち着ける環境は重要だと思っています。ネコってダンボール箱なんかにも入りたがりますよね。避難所の様な所で身を隠す場所があるって大切なんだなって思います。しかもオシャレっていうのがすごくいいですね。

■山本和豊(dessence)

山本:今回お話をいただいて、普段は建築や空間の仕事をしているので、そこで何かできることがないかと考えました。僕らみたいな仕事をしている人間が、ペットと一緒の避難を考えたときに、何か可能性みたいなものを示していかないといけないのかなと。

「フラットパック」とも呼ばれる、予めパーツが分かれていて組み立てられる家具。

「フラットパック」とも呼ばれる、予めパーツが分かれていて組み立てられる家具。

デザインしたのはケージなんですが、単純に板をカットして、溝を切って差し込んでいるだけなんですね。分解して車のどこにでも入れられます。うちもイヌがいるんですが、繋がれているのが好きじゃないんです。なので、リードを外してケージの中でゆっくりできるように、日を避けられる屋根が付いています。あと、避難をした時に「どう組み立てなきゃいけないのかな?」と迷わずに、なんとなく組み合わせていくと出来上がる、モノだけで判断できるようなケージにしようと思いました。

──山本さんは埼玉で『NEWLAND』という施設を運営されていて、その中にはドッグランもあるそうなんですが、ワンちゃん同士の問題が起こることもあるとか……?

 〈dessence〉の山本和豊さん。埼玉県熊谷市の『NEWLAND』は、ドッグランのほかに飲食店やショップなども併設されている複合施設。

〈dessence〉の山本和豊さん。埼玉県熊谷市の『NEWLAND』は、ドッグランのほかに飲食店やショップなども併設されている複合施設。

山本:そうですね、トラブルは飼い主さん次第かなと思いますね。避難ということでいえば、逃げたくても、飼い主とのリレーションがとれていないとうまく逃げられないんじゃないかと思います。うちの子は、僕の声のトーンがわかるんですね。ずるがしこいからちょっと言うだけじゃ来ないんですけど、本当に来ないといけないトーンで呼べば必ず来る。でもドッグランを見ていると、なかには言うことを聞かない子もいるんです。だから普段からリレーションをきちんと取っておくことですよね。あとケージが自分のものであると認識させておくことも重要だと思います。備えがしっかりできていないと、ツールがあっても活かせないということになりかねないかもしれないです。

──耳の痛い飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんね。でも、備えをしっかりということですね。

平井:中に入ってしまえば視線がコントロールできるのがいいですよね。フェンスだと中でリードから開放されますけど、外から見えていて身が隠せない。このケージの中に入れて上を覆うことで、イヌやネコが安心できる場所になるなあと思いました。

熊本でも、大勢の避難者がいる避難所内で、熟睡できない人のために、この中で眠っていいですよというダンボールの小屋が置いてあったところがありました。最近の避難所では、早い段階でダンボールの仕切りや布を使った区分けがされるようになりました。避難生活が何日も続くと自分の空間でぐっすり寝たいと思うし、プライバシーってすごく大事です。それは人間だけではなく、ペットも同じなんだと思います。

■福元成武(TANK)

福元:僕は建築の内装と設計、工事をやっています。皆さんとちょっと視点が変わって、模型なんです。はじめこの話をいただいた時、なんとなく自分がペットを助けることはできそうな気がしたんです。それよりもお年寄りの方のほうがペットを飼ってらっしゃる方が多いし、失礼な言い方かもしれないですが、自分自身の避難すらままならないんじゃないかと思ったんです。であればそっちにフォーカスを当てて、避難できるしくみを考えてみたいなと。それが今回のこの模型なんです。

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福元さんが「公助」について考えた模型。

自助できなければ、お互いに助け合う互助がある。それもままならなければ、公助ですよね。企業の力を借りて助けてもらう。「助けてもらうおう」というスタンスでいるときに、どういったグッズが必要なのか、という視点で考えました。

物流を用いた公助について、フィギュアなどを使いわかりやすく解説をしている。

物流を用いた公助について、フィギュアなどを使いわかりやすく解説している。

物流企業は、物を目的地に運ぶという点で交通網も把握しているし、モノの管理や記録にも強い職能を持ってらっしゃると思うんです。それをペットと置き替えたらどうなのかなと。震災後のルート配送があると思うので、配送中に発見した動物をピックする。そのために規格化された小屋を予め用意する。ペットたちはピックされた段階で記録されるので、どこどこにいた誰ちゃんかわかっている状態だと思うんです。物流の力を借りて同行避難を考えるのもいいのではないかと。

──普段使われている素材からアイデアが出たという感じなんですよね。

〈TANK〉の福元成武さん。自身もネコを2匹飼っている。

〈TANK〉の福元成武さん。自身もネコを2匹飼っている。

そうです。工場でフォークリフトで運ばれているパレットという素材なんですけど、あれをモジュール化して、4等分してイヌが入れられるように考えています。あの寸法を利用して小屋をパッケージするとよいのではないかということで始まっています。

平井:東日本大震災の時の岩手の避難所では、避難物資を管理する場所に、とある配送会社の方が出向されていらしてたんです。その方がとにかくテキパキと届いた支援物資をカテゴリに分けて仕分けされ、そこを拠点にどう発送するかを管理していらっしゃった。企業の専門分野を活かした連携は今後大切になってくると思います。プロフェッショナルな部分と協働で支援体制をつくっていくことは大切だなと思いました。

 

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