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東京イチの危険地帯 墨田区から考える東京の災害(前編)

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東京イチの危険地帯 墨田区から考える東京の災害(前編)
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2016年4月30日
東京イチの危険地帯 墨田区から考える東京の災害(前編)
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文_江口晋太朗、バナーデザイン_siun、編集_桜井祐
防災都市構想が危険地帯を
つくったという皮肉

1923年9月1日の関東大震災によって壊滅的な被害を受けた東京だったが、そんな事態を、近代的な都市建設への好機と捉えたのが後藤だった。まずは、復興費の30億円(当時の国家予算の2倍以上)をもとに、欧米における最新の都市計画を参考して、新都を造営するなどといった復興基本方針を策定。さらに、帝都復興院の設置など独立した機関をもとに、縦割りの省庁を横断する体制づくりを打ち立て、江戸時代の歴史を引きずる非近代的都市ではなく、「燃えない近代都市」に作り変える大きな構想を計画したのだ。

後藤新平。

後藤新平(1857年7月24日〜1929年4月13日)。台湾総督府民政長官、満州鉄道初代総裁などを経て、日本の大陸進出と都市計画を支えた。関東大震災後に内務大臣兼帝都復興院総裁に就き、帝都復興計画を立案した。

しかし、当時の大蔵省との交渉では計画の実現性の不透明さから予算は縮小。議会においては後藤の理想論ともいえる構想に対し、現実派・守旧派によって大きく抵抗され、計画は大幅な修正を余儀なくされた。さらに1923年12月、虎ノ門外で皇太子(後の昭和天皇)が社会主義者から狙撃を受けた「虎ノ門事件」の発生で、時の内閣は責任を取って総辞職。内務大臣だった後藤も辞任となり、帝都復興院は1923年2月に廃止。後藤の構想はあえなく潰えてしまう。

その後、後藤の構想を引き継いだ内務省の外局となった復興局が、後藤の構想にあった全面的な区画整理や避難路や避難場所確保のための広大な街路や公園の設置、不燃建造物の建築といった計画を復興事業として推進。昭和通りや靖国通り、明治通りなどのインフラ整備、隅田公園や清澄公園などの公園を新設した。

現在、表参道ヒルズとなっているかつての同潤会アパートも、不燃鉄鉄筋集合住宅という引き継がれた復興事業の産物であり、後藤が夢見た都市計画の一部として残っているが、実施された復興事業の多くは山の手の内側ばかり。焼失した東京市全域19,500haのうち8.5%の1,652haしか区画整理されておらず、東京の中心部を除く大部分は基盤整備が行われないまま広域に渡って乱開発されてしまう。

現在、表参道ヒルズのある場所に存在した同潤会アパート。

かつての同潤会アパート。当時の風情は表参道ヒルズ内にある「同潤館」に見ることができる。

その結果が山手線外周部を中心として、市周辺部に円環状に生成された地域であり、現在も墨田区、浅草や上野などの台東区、北池袋などの豊島区、荒川区、中野区にある木造密集地域だ。これら木造密集地域は、災害発生時、火災による延焼や建物の倒壊で被害が広がる可能性が非常に高い。そのことは、これらの木造密集地域が、不燃料領域率(市街地の燃えにくさを表す指標)60%以下の危険な場所として、1997年に「木造住宅密集地域整備プログラム」に指定されたことからも明らかである。

国が関東大震災後に行った中途半端な東京の復興計画が、現代の災害危険地域を二次的につくり出したことはとても示唆的だ。そのことは、災害が起こった後における国主導の防災対策がいかに困難かを物語っている。となれば、次に重視すべきは、より小規模の区単位、民間レベルにおける防災対策だろう。

倒壊危険度ランキング

東京都震災対策条例に基づき、概ね5年ごとに都内市街化区域について、各地域における地震に関する危険性を測定・公表される「地震に関する地域危険度測定調査」。「建物倒壊危険度」は、同調査において、都内5,133町丁目における町丁目ごとの建物の倒壊危険性の度合いを5つのランクに分け、相対的に評価したもの。そのうち、最も評価が悪かった町丁目を表で表した。東京都都市整備局 「地震に関する地域危険度測定調査(第7回)」2013年9月

後編では墨田区がどんな防災への取り組みを行っているかを紹介しよう。どれも非常に意味のある取り組みであり、事前に知り、参加していれば、墨田区における暮らしが一層安全なものになることは間違いない。

東京イチの危険地帯墨田区から考える東京の災害(後編)

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