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物体の表面に揺れるもの:若木信吾インタビュー

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物体の表面に揺れるもの:若木信吾インタビュー
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2016年4月5日
物体の表面に揺れるもの:若木信吾インタビュー
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写真・文_下屋敷和文、バナーデザイン_siun、構成_飯田ネオ
モノの存在を
モノの側から考えてみる

──今回展示している作品を見て、若木さんにとってのブツ撮りの定義って広いんだなと思いました。

タイトルの「表面」は後から付けてるんだけど、ある意味全部含まれてるのかもね。写真のセレクトが終わった頃にいろいろと調べてたら「思弁的実在論」っていう思想を見つけたんだよ。現代思想の中ではわりとトレンドらしいんだけど、モノの存在をモノの側から考えてみようっていうもので。カント以来ずっと自分たち人間が主体だということが思考の始まりだって言われてきた、「自分たちが考えるから自分たちがいる」みたいな。でもちょっと別の角度からモノについて考えようというのが、最近の現代思想にあるらしくて。

_DSC2733

──そこが符号したんですね。

写真家って、撮った写真をベタや箱の中にしまい込んで、ある時「あの写真をお願いします」って言われていきなり作品として選び出すことがあるじゃない。しまってる間は撮った写真に対して責任を取っていないわけで、選ばれない期間にそのネガや写真たちはどうしているのかっていうことをずっと考えてたんだけど、なんか似ているなって。ちょうど俺ぐらいの年齢の哲学者が考えているのも面白いなと思ったんだよ。

CDのように気軽に
写真集が変えるようになった90年代

──確かに、僕たちが撮るスナップ写真って、多くの写真は行き場がない。つまりシャッターを押した瞬間に作品の命が生まれるけれど、その子どもたちはどこにもいく場所がないというか……。

子どもかどうかはわからないけど、今回みたいにテーマが与えられたら生き返ってくるわけじゃん。ある意味編集作業に近いけれど、写真にはそういう可能性がずっとあるよね。

自分の好きな60〜70年代の写真家の人たちの写真集は、そういうやり方で作られているものが多い。テーマありきで撮りに行くのではなくて、普段からストリートに出て何でもかんでもバシャバシャ撮って、自分が良いと思う写真でテーマを絞り出す。そして、それがひとつの作品集になるっていう。そういう方法でも撮影者の個性が出るのは写真ならではだなって思うよね。例えばゲーリー・ウィノグランドは、「女性は美しい」っていうテーマで構成した写真集や「組織」みたいなテーマで構成された「Public Relations」という写真集もある。

_DSC2705

──日本の場合はプロジェクト成果が写真集だとか、個展だとか、何かしらパッケージにして出す傾向がありますよね。

90年代に始まったやり方なのかな。それまでの80年代は写真集なんてめったに出せなかったわけ。1〜2万円ぐらいの写真集を「これが俺の一生だ!」という風に出してたものなんだよ。でも90年代になって、CD みたいに気軽に買える写真集があってもいいよねっていう流れが生まれて、中小出版社を中心に、2000〜3000円代でどんどん写真集が出せるようになった。それが今の若い人たちには当たり前だから、「そうしないとダメなんだ」って刷り込まれてるんだと思うんだよね。

_DSC2714

その結果、いろんな人が写真家って言えるようになった。「写真家です、なぜならZINEがあるからです」みたいなね。それは決して悪いことじゃなくて、むしろいいことだと思う。90年代のベースがあったからこそ今そういうふうに写真が身近なものになったっていうことだと思うし。ただ、別に印刷にこだわらずに、好きなフォーマットでやればいいとは思うけどね。

──その場所に行かないと見れない、っていうのも写真展の面白さですもんね。

それもあるよね。あと写真って、雑誌にもできるし、ビルボードにもなるし、デジタルにもなる。どんなメディアやフォーマットにも対応できるから、それが面白いところだよね。映画だと劇場とか、マンガだとコミック本とか、予めフォーマットがあったほうが伝わるカルチャーと違って、写真の強さってそこだと思うんだよね。

 

次のページ:東京はパリとかロンドンを撮るのと変わらないぐらいの面白さがある

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