logo_s

物体の表面に揺れるもの:若木信吾インタビュー

  • twitter
  • facebook
  • instagram
  • contact
物体の表面に揺れるもの:若木信吾インタビュー
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2016年4月5日
物体の表面に揺れるもの:若木信吾インタビュー
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
写真・文_下屋敷和文、バナーデザイン_siun、構成_飯田ネオ
所有者の不在感を
写真に集めようと思った

──ブツ撮りと言えば、若木さんの写真集『T』(youngtree press)を思い出しました。あの写真集は若木さんのおじいさんの農具を、記録写真のように撮影していますよね。今回の展示している写真との違いは何かありますか?

今回、やっぱり『T』の話になるんだよね。あれはおじいさんが生きてる時に撮ったモノたちで構成したんだけど、今思うと所有者のいなくなったモノの存在のあり方を想像しながら撮っている写真なんだよね。そのモノにとっていちばん必要な人がいなくなることで、なんの機能も成さなくなる。そういう第三者的視点が今回の展示とちょっと繋がっていて、所有者の不在感みたいなものを写真で集めようと思ってセレクトしたのかもなとも思うわけ。きっとモノ自体の存在を撮ってたんだろうなって。

──展示作品の中で、僕がアシスタントをしていたときに撮影した写真が3枚ありました。懐かしい気持ちと不思議な感覚を覚えたんですが、あの写真も若木さんにとってはブツなんでしょうか。

_DSC2765

もともと、ヒルサイドテラスのいちばん広い部屋に、ものすごく大きいプリントを3枚だけ飾ろうと思ってたの。あの写真って面白いじゃん。アスファルトなんだけど、別の素材があって、それに雨が降ってて、いろんな反射があって。

──難しいです、けど、わかります。僕から見ると、あの3枚は、いろんなものが1枚のなかで行き来してるじゃないですか。コンクリートにピントがあってて、水たまりの木にもピントが合っていて……。1枚の中なんだけど、視点というかピントをちょっとずらすだけで、その全て、空間の……、あ、ごめんなさい、余計難しく考えてしまいました(笑)。

(笑)。でもそういう、反射というものに対して写真ってすごく敏感だからね。写真自体がレンズっていう、光を通すものを使っているわけだしね。あとこの写真を選んだのは、この会場の横にあるスペースが似てたのもあるかもしれない。窓の外にタイル貼りで水が張ってあって、いろんなところで反射して。イメージに近いから面白いかもなって、そういうリンクで思い出したのかもしれないね。

ポートレートもブツも
自分の気持ちを乗せずに撮る

──若木さんにとって、ポートレートとブツ撮りの違いってなんだと思いますか?

自分が撮るスタンスとしてはあんまり変わらない。でもポートレートの場合は、表情をいかに引き出すかということより、どこに目があって、どこに鼻があって……ということがちゃんとわかる写真にしておくことのほうが大事。笑ったり、怒ったり、表情を作ってしまうとその人の本質が見えなくなくなるじゃない? やっぱり表情って自分をプロテクトするためのものだから。けど、モノっていうのは自分が動かない限りは同じ角度でいてくれるし、ゆっくり撮れるし、そこに対してあんまり自分の気持ちを乗っけないようにしてる。

_DSC2725

──なるほど。

最近面白かったのが、佐内(正史)さんが復刊した『relax』(マガジンハウス)のフリーペーパーで「最近何撮ってるんですか?」って聞かれて「マグカップかな」と答えていて、「なんていうかさ、こういうものは自分の気持ちを乗っけるだけ乗っけても、相手が重荷を感じないからいいんだよね」と。それを読んで、まさにその通りって。佐内さんの場合は自分の気持ちを乗せるだけ乗せるけど、俺は自分の気持ちをなるべく乗っけずに撮る。その違いはあるけど、モノっていうのはそういうものだっていう、その考え方が同じでとても面白かったかな。

 

次のページ:モノの存在をモノの側から考えてみる

1 2 3 4

関連記事

FEATURE

  • コミュニティを紡ぐ、新しい“図書館”
    2019年4月23日
  • “アングラ”再訪 #1紅テント 座長代行と看板女優...
    2019年2月1日
  • シモキタの書店が挑み続ける“これからの街の本屋”の...
    2017年12月25日
  • 京島でおそらく初(?)のブックマーケット 「Sum...
    2017年11月24日
  • もつ焼きの聖地にタワマンは必要か? 東京R不動産・...
    2017年11月3日

RANKING

  • no.1
    大学堂ラストラン!東京下町の移動アイスクリーム&ホットドック屋が41年...
  • no.2
    東京イチの危険地帯 墨田区から考える東京の災害(前編)
  • no.3
    吉原で知る日本の性風俗史 “お歯黒どぶ”の縁でカストリ書房が伝えたい...
  • no.4
    「東京防災」140円で一般販売決定! 11/16(月)より都庁および紀...
  • no.5
    〈フォトレポート〉白熱の西浅草 平成29年浅草神社例大祭「三社祭」
PAGE TOP