お笑いは個々人の研澄まされた感性で勝負するもの
シモキタの街をお笑いが駆け巡った2日間、プロデューサーである片山氏は密かな目標を立てていたという。それは「走らないこと」。
「2日間の長丁場、慌ててもしゃあないじゃないですか。ま、ちょこっとだけ小走りしちゃいましたけど(笑)。やっぱり、それぞれ会場の空気がどうなってるか、気にはなりました。そもそもフェスとお笑いの相性も、どんなもんやろ? っていうのがあって。
音楽のことはあまりわからないですけど、フェスだと全体の一体感を楽しむというのもあると思うんですね。でもお笑いって、個々人の研ぎ澄まされた感性で勝負するものなんで、フェス的なものとのマッチングが気にはなってたんです。ぼくは、芸人が群れて何かをするってそんなにいいことじゃないと思うんですよ。たまには祭りがあってもいいけど、でも芸人がそういう生き物だっていうことは忘れんようにしないと」
フェスとお笑いの一筋縄ではいかない関係。シモキタとお笑いの関係がよりいっそう深まるにしたがい、この片山の視点はボディブローのように効いてくるような気がする。
「今回はいろんな事務所を巻き込みつつ、みんなでひとつのところに向っていくためのきっかけ作りが目的でもあって、そこは達成できたかなと。あとはもう芸人自身がどこまで自分の面白いと思っていることを表現できるか? でしょうね。テレビだと制約があって難しいことも、ライブだと剥き出しのまま表現できたりしますからね。
小劇場B1やしもきた空間リバティの小さいサイズだと、お客さんとの一体感もすごい。あの熱量が大切なんです。で、最後に打ち上げで美味いビールを飲めたら、なんでも楽しめるかなって(笑)」
シモキタとお笑いの蜜月はまだ始まったばかりだ。
九龍ジョー
くーろん・じょー/編集者、ライター。単著に『メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方』(DU BOOKS)、磯部涼との共著に『遊びつかれた朝に——10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』(Pヴァイン)など。