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メッセンジャーとヌードカレンダー 肉体の先にあるもの:〈Hübner〉YUKIインタビュー

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メッセンジャーとヌードカレンダー 肉体の先にあるもの:〈Hübner〉YUKIインタビュー
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2015年12月24日
メッセンジャーとヌードカレンダー 肉体の先にあるもの:〈Hübner〉YUKIインタビュー
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写真_下屋敷和文、取材・文_飯田ネオ
月ごとに表情が変わるカレンダー
そして乳首

──この裁断、すごく特徴的だなあと思いました。

嬉しいです。装丁は、デザイナーの千原航さんにお願いしました。打ち合わせをした時に、千原さんが見本を5パターンくらい持ってきてくれたんですね。その中で私たちが気に入ったのがこの“ガタガタ綴じ”(笑)。それぞれのページがL字型で、それを組み合わせて綴じてるんです。

L字でカットされているため、カレンダーを開くと月によって見え方が変わる。

L字でカットされているため、カレンダーを開くと月によって見え方が変わる。

穴は開けてないから好きなところに画鋲を刺して貼ってもらうんですけど、面白いのが、月ごとに変わって見えるんです。ある月は、顔と足と手が出て一つの生命体みたいに見えたり。

──確かに!

乳首が目みたいに見えません?

──そう言われてみると……。あんまりこう意識して人の乳首を見る機会もないですね。

私も特に興味なかったんですけど、今回の撮影でその存在に気づかされたんですよ。正羅くんはずっとヌードを撮ってるから詳しくて、あるメッセンジャーの乳首を見て「色がない!」って。なんか輪郭がぼやけてるのって、少年から大人になる時のごく数年しか現れない、すごい特殊な乳首なんですって。

──そんな貴重な乳首が。

はじめて知りました(笑)。でも、最近、某アイドルのファンが乳首のカラーチャートを作ったらしくて、キテるみたいなんですよ、乳首(笑)。それで千原さんと構成を考えている時に偶然、この見え方の発見をして「流行ってるやつだ!」って盛り上がっちゃって。

もちろんそれだけじゃなくて、もっと深いところで言うと、AV監督の二村ヒトシさんが著書の中で「男の性は股間だけじゃない」って書いていたのを見たことがあったんですね。彼はそれをAVの中で表現しているんですけど、男性の性というのも見直される時代になるのかもしれないなあって。

──なるほど。男性は社会的にも性的にも強い立場だけれど、そこをフラットにしたいという感じなんでしょうか。

男の人って、昔から責任を“負わされる”立場だったと思うんです。でも、今は女性も働いていて、状況は変わってきている。男性性にがんじがらめになっている鎧を取ってあげたいなという気持ちはありましたね。

──乳首から男性性を見るのは面白いですね(笑)。かつ、先ほどおっしゃっていた「男女の立場を対等なものにしたい」という部分の、別の視点からのアプローチでもありますよね。

そうですね、もうちょっと楽になろうよって。あとやっぱり、女の私が作るからには、女の人に見てほしいんですね。まず、女性のメッセンジャーってすごく少ないんです。いるんですけど、男性より圧倒的に少ないし、その存在にあんまり気づいてもらえていない。そこに対して「間口を作りたい」という思いがずっとあったんです。

もちろん、男性、女性だけでなく自転車に乗る人を増やしたいし、メッセンジャーという存在をもっと知ってほしいというのもあります。そのきっかけになったらと。

伝票を書く時に使うバインダー。シールでカスタマイズしている。

伝票を書く時に使うバインダー。シールでカスタマイズしている。

「稼げなくなった」時代
だからこそ多様性を考える

──メッセンジャーって何人ぐらいいるんですか?

のび:多分、全体で200人くらいじゃないですか? 「ティーサーブ」(大手メッセンジャー会社)だけで100人くらいいそうですけどね。

えっ、今ってそれだけ? 減ったね……!

のび:ここ3〜4年くらいですね。稼げなくなったんですよ。

のびさんも元メッセンジャー。墨田区出身&在住で、西浅草で居酒屋を営んでいる。

のびさんも元メッセンジャー。墨田区出身&在住で、西浅草で居酒屋を営んでいる。

──稼げないというのは?

紙の書類はデータで送ればよくなった。さらにリーマン・ショックが起きて、会社が経費を減らすようになった。メッセンジャー業界にもどんどん価格競争が起こって、小さいところは潰れてしまったり、横取りとはいかないまでも、仕事が他に取られてしまうケースもあったりで、小さい会社がどんどんなくなっていったんですね。

──なるほど、でもYUKIさんは一回メッセンジャーを辞めて、また戻られましたよね。

私が辞めたのは、そうした時代うんぬんというよりも、ライダーとしてやり切った気持ちがあったからというほうが強かったんですね。それでも戻ろうと思ったのは、今所属している〈Hübner Bike Messenger〉が、自分の理想のメッセンジャー会社に近い気がしたからなんですよね。

仕事道具として欠かせない地図。「じっと眺めてるだけでも面白い」とYUKIさん。

仕事道具として欠かせない地図。「じっと眺めてるだけでも面白い」とYUKIさん。

──理想というと?

社長はアパレルの専門学校に行っていた人で、立ち上げで入ったもう一人の子も元はデザイナー。事務所にメッセンジャーが来るのを見て「自分もやってみよう」と思ったらしいんです。私も美大出身だし、みんな素質が似てるんですよね。だから、クリエイターの側に立った会社になるんじゃないかなって。

──アーティストさんの作品を運ぶというような。

それもありますし、お花もそうですよね。車で運ぶとどうしても花びらが散ってしまったり、他の荷物と混ざってしまう。でも私たちだったら、その一つの荷物だけを丁寧に運ぶことができるんです。

だから今は、なるべく大きなものも運べるように、昔とは自転車の仕様を変えてるんです。昔はスピード重視で、車の間をすり抜けられるようにハンドルがキュッと小さかったんですけど、今はそれよりも安定が重要。私以外の2人はカーゴバイクで、60キロくらいまで運べるんです。先日も丼ぶりを10キロ分、ダンボールに入れて運びました(笑)。

ハンドルは少し長さに余裕があり、前輪上部には荷物を詰めるようキャリアがセットされている。

ハンドルは少し長さに余裕があり、前輪上部には荷物を詰めるようキャリアがセットされている。

──確かに一つひとつ、その荷物だけを持ってきてくれるというのは、届けられるほうもなんだか嬉しくなりますね。

「なんか爽やかだね」って言われることもありますね。メッセンジャーってやっぱり人なので、ただ荷物を届けるっていうだけじゃなくて、人と人とが繋がっていく感じがあるんです。そこを大切にしていきたいんですよね。

 

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