logo_s

メッセンジャーとヌードカレンダー 肉体の先にあるもの:〈Hübner〉YUKIインタビュー

  • twitter
  • facebook
  • instagram
  • contact
メッセンジャーとヌードカレンダー 肉体の先にあるもの:〈Hübner〉YUKIインタビュー
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2015年12月24日
メッセンジャーとヌードカレンダー 肉体の先にあるもの:〈Hübner〉YUKIインタビュー
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
写真_下屋敷和文、取材・文_飯田ネオ

東京の最前線を駆け抜け、“日本最速”の名を轟かせたメッセンジャー、YUKIさん。一時期はその世界から身を引いた彼女だったが、今年、メッセンジャー会社〈Hübner Bike Messenger〉の一員に加わり、再びメッセンジャーとしての活動をスタートさせた。

復帰にあわせて取り組んだのが、同社から発行するヌードカレンダーの制作だった。写真家には中山正羅さん、被写体には現役のメッセンジャーを起用し、ヌードでの撮影を敢行した。裸のままサドルにまたがったり、バイクを枕のようにして寝転んだりと、斬新な写真表現が12ヶ月の暦に添えられている。これらのディレクションは全て、YUKIさんによるものだ。

「HÜBNER×BABY MSR 2016 Directed by YUKI」2000円(税込み)

「HÜBNER×BABY MSR 2016 Directed by YUKI」2000円(税込み)

わずか2ヶ月ほどの製作期間を経て完成したカレンダーは、「HÜBNER×BABY MSR 2016 Directed by YUKI」と名付けられた。2015年11月27日(金)に発売が始まり、予約注文、オンライン販売を経て、現在は書店での取扱い店も増えている。話題を呼ぶヌードカレンダーの裏側には、YUKIさんのどんな発想や想いがあったのか。また、どうして写真集ではなく、カレンダーという形をとったのか。11月下旬の肌寒い日、カレンダーの撮影場所にもなった浅草寺近くのビル屋上と、行きつけという西浅草の居酒屋「のびちゃん」で話を聞いた。

女性の視点で考えた、
男性ヌードカレンダー

──なぜ「ヌード」という表現を選んだのでしょうか。

男性のヌードって全然興味なかったんです。でも今年の4月に正羅くんの個展を見に行って、意識が変わったんですね。自然で、いやらしさが全然なくて、びっくりしたんです。例えばアラーキーさんのヌードだったら、花のアップにもギラギラとした欲望が感じられますよね。でも、正羅くんの撮る花はいつも見ている花と変わらなかった。ただそこに花と人が、全裸でいる。その世界に魅入られたというか。

使用された写真の一部。カレンダーになるとまた違った表情に見える。

使用された写真の一部。カレンダーになるとまた違った表情に見える。

──今回、「女性が作った男性のヌードカレンダー」というところが注目されていると思うんですが、そもそも”メッセンジャーのカレンダー”というもの自体、珍しい印象がありました。

実は世界にはたくさんあるんです。でも、いわゆる消防員のカレンダーみたいな、マッチョなテイストが主流なんですね。それはそれで嫌いじゃないけど、女性の私がやるならもっと違うものにしようという気持ちがありました。だからそういう、ガタイのいい人はあえて外したんです。

あと、ヌードを特別なものにしたくなかった。生活と地続きのところにあってほしいなと思って、カレンダーという形にしたんです。

YUKIさん。この日は祐天寺から浅草まで自転車でやって来てくれた。

YUKIさん。この日は祐天寺から浅草まで自転車でやって来てくれた。

──なるほど。特にYUKIさんの中では、「女性として」という視点が強かったんですね。

そうですね。メッセンジャーって男社会なんですよ。私はその中でずっと仕事をしてきて、男女の立場を対等なものにしたいという気持ちが昔からあったんです。それって、「男みたいに働く」というより、“女らしさ”をありのまま出せたほうがより平等ですよね。ただ、男社会の中で“女らしさ”を出すにはまだまだ偏見があるなあと。なので、今まで私は自分の女性性というものについて言及してこなかったんです。

──”女である自分”というのは、メッセンジャーとしてあまり出して来なかったんですね。

他の女性メッセンジャーと接する時も、外見にはほとんど意識を持たなかったです。誰々が綺麗とか、そういうのはどうでもいいことだなって。でも、8月末ぐらいに社長が「ヌード写真を撮りたい」って言った時にハッとして。“今まで自分が避けていたものが来た”って思いましたね。女として、男のヌードを表現するという部分に取り組む必要があるんだろうなと。

撮影場所でもある西浅草のビルの屋上。奥手には浅草寺がある。

撮影場所でもある西浅草のビルの屋上。奥手には浅草寺がある。

──女性として表現をする機会がついにやってきたんですね。正羅さんに撮影をお願いしたのは、彼のヌードの捉え方と自分の考え方が似てたのでしょうか。

う〜ん、正羅くんはもっともっと深いところで表現してると思うので、根源的なところまで同じかはわかりません。まだ理解できていないところもたくさんあって。例えば、どういう基準に写真をセレクトしているのか、すごく謎なんですよ。もっと可愛らしい表情もあったのに、怯えているような、私だったら選ばないような写真を選ぶんです。どこが良かったのか聞いたら、「これは自分にしか見せてない顔だから」って。

──なるほど!

うちの社長も出てるんですけど、10年付き合いがあるのに、いつもと顔が違うんですよ。「あれ、こんな顔だったっけ?」って。何度も撮り直してもらったけど、どれも見たことなくて。それでようやく「あ、この人って実はこういう顔だったんだ!」って気がついて。それは正羅くんと長く向き合ったことで引き出された表情だったんですよね。1回の撮影で、だいたい5〜6時間かけるので、関係値が深まっていくんだと思います。

──ディレクションはYUKIさんがやってらっしゃるんですよね。

そうです。でも、撮影は正羅くんの感性にお任せしました。やっぱり被写体と向き合ってほしいから。私はずっと裏方で、後ろで自転車を持ったり、人が来ないように見張ったり。

──それぞれ違う場所で撮影されているのも面白いですね。

そうです。中目黒にあるバー「KINFOLK」とか、いつも日に当たってるベランダとか、それぞれのメッセンジャーにちなんだ場所なんです。このビルにも、参加してくれたメッセンジャーの子が住んでるし。

屋上には電子レンジや冷蔵庫が放置され、独特の雰囲気を漂わせている。

屋上には電子レンジや冷蔵庫が放置され、独特の雰囲気を漂わせている。

物干ざおの合間から。

物干ざおの合間から。

──滝の写真なんて、すごいシチュエーションですね。

これは、カネコ君っていうメッセンジャーの、お父さんが経営する清里のキャンプ場。誰も居ないから自由に撮ったんです。こっちはメッセンジャーバッグ作ってる人で、この子はDJ。全裸にハマったみたいで、「今度から全裸でDJします」って(笑)。みんな、撮影の前はパンプアップしてきてたみたい。

──制作費用はどうやって集められたんですか?

全部自分たちで集めました。これまでメッセンジャーをしてきた中でご縁があった企業やお店を訪ねて、企画書を見てもらって。

でもビジネスにはしたくなかったので、協力してくださった金額分のカレンダーをお渡しして、自由に販売してもらっています。販売したらプラマイゼロになる。それに“いかにも協賛”みたいな感じは生々しいから、掲載したロゴもみんな同じサイズにしたんです。とにかくビジネスを省いて、ギリギリのところで作りました。理解あるスポンサーが集まって本当に嬉しかったですね。

 

次のページ:月ごとに表情が変わるカレンダー そして乳首

1 2 3

関連記事

FEATURE

  • 今日も店主はオペンと叫ぶ 代田5丁目の欧風カレー:...
    2016年12月29日
  • 東京イチの危険地帯墨田区から考える東京の災害(後編...
    2016年9月1日
  • 〈フォトレポート〉第35回すみだ錦糸町河内音頭大盆...
    2016年8月30日
  • 西蒲田「第二日の出湯」がつなぐ、『ゴジラ』と『シン...
    2016年8月13日
  • 〈フォトレポート〉第39回隅田川花火大会
    2016年7月31日

RANKING

  • no.1
    『東京タラレバ娘』のシンボル「五輪橋」に見る 東京オリンピックの面影
  • no.2
    天才司会者・もんちゃんの妙技。蒲田のパブ「オアシス」が日本一の理由
  • no.3
    日本一のソープ街・吉原発のブランドが見据える5年後の吉原:〈新吉原〉デ...
  • no.4
    猫社員は今日も働く 新宿三丁目「カフェ アルル」が猫を雇う理由
  • no.5
    〈フォトレポート〉2016.06.07 19:00 at 渋谷 宮下公...
PAGE TOP