2015年7月22日
パンの未来は世田谷にある 〜パンラボ池田浩明による世田谷パン論〜
写真_大志摩徹、鈴木渉、下屋敷和文/文_池田浩明/イラスト_ルーカス・D・マーカス/編集_川田洋平、飯田ネオ
パンの世界を変える
「世田谷発」の胎動
ネクストジェネレーションも胎動している。彼らの動向を見れば、次に日本のパンになにがやってくるのか、予見できるかもしれない。
パン屋のイートインスペースは単にパンを食べる場所であることを超え、くつろぎ、癒され、自分らしい時間を過ごす場所になっていくのかもしれない。

ニューウェーヴの盟主、ユヌクレ(豪徳寺)。独創的なパンを求めて、平日休日を問わず行列が出来る人気店。
人気を揺るぎないものにした「ユヌクレ」(豪徳寺)を訪れるとそのように感じる。水色に塗られた壁、シンプルなインテリア、大きく開いた窓から陽光が差し込む店内はとても居心地がよく、近年のカフェムーブメントの影響を強く感じる。パンもハイセンス。ブリジット・バルドーが名づけたとされる「トロペジェンヌ」を秀逸にアレンジ。ブリオッシュ生地にミルククリームと自家製ジャムをはさみ、甘さと酸味とフルーツの香りが絶妙に交錯する。
パン屋がただパン生地を作ることだけに秀でていればいい時代は徐々に過去になりつつある。パンはお菓子や料理やコーヒーなどといった他の飲食分野とクロスオーバーし、グルメでありエンターテイメントであることを求められつつある。
こうした店が、新しい「世田谷発」として、これからのパンの世界を変えていくことになるだろう。
池田浩明
ライター。パンラボ主宰。ブレッドギーク。パンを食べまくり、パンを書きまくる。著書に『パンラボ』(白夜書房)、『日本全国パンの聖地を旅する パン欲』(世界文化社)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)など。近況はブログで更新中。panlabo.jugem.jp