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漫画家・柴門ふみインタビュー「ウォーターフロント=江戸前だったのよ」— 観察者の目が捉えた、東京と女性像の転換期

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漫画家・柴門ふみインタビュー「ウォーターフロント=江戸前だったのよ」— 観察者の目が捉えた、東京と女性像の転換期
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2015年7月22日
漫画家・柴門ふみインタビュー「ウォーターフロント=江戸前だったのよ」— 観察者の目が捉えた、東京と女性像の転換期
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取材・文_飯田ネオ / 写真_熊谷直子

──柴門さん自身もバブル的な体験をされたことはありますか?

仕事ばっかりしていたら、秋元康さんが「どこか連れていってあげるよ」って、一晩だけディスコツアーに連れていってくれたことがあったんですよ。バスをチャーターして、ジュリアナ東京に行ってから神楽坂のディスコに行くっていう。私以外のメンバーが、竹内まりやさんと、林真理子さんと、古館伊知郎さん。どうしてこの人選なんだろうって思いながら(笑)。でも、とりあえずお立ち台に立って、記念写真を撮って帰りました。楽しかったですよ。私にとってのバブルはその1日だけですけど、1コマだけなら描けますね、ジュリアナ(笑)。

──「お立ち台」って異様な文化ですよね。女性が台に乗っていて、男性が下から見上げているという、すごく不思議な構図で。

あれは気持ち良かったと思いますね。だって、地方でジャージを着て過ごしていたような子が、東京デビューした途端に「君の言うことならなんでも聞くよ」ってチヤホヤされるんですよ? それはもう、お立ち台にも上がっちゃいますよね(笑)。

──商品価値が付いて高騰した女性の行き着く先が、お立ち台だったとも言えますね。

かつ、女性の貞操観念も変わったんですよ。1980年代のはじめに放送された、山田太一さんのドラマ『想い出づくり』(TBS系列、1981年放送)にすごく象徴的なエピソードがあって。田中裕子さん演じる、ちょっと翔んでる風の女の子がお見合いに行くんですけど、お見合い相手に「あなたは処女ですか?」って聞かれるんです。そこで「いいえ」って言った途端に破談になってしまうという。

──バブル以前は、処女かどうかが女性の価値を決める大きなファクターだったんですね。

でも、時代が変わって、処女じゃなくてもお金持ちと結婚できる筋道ができたんですよ。もう処女をお嫁入り道具にしなくても良くなった。

──山田詠美さんや、松任谷由実さん、中尊寺ゆつこさんなど、新しい女性像をキャッチアップする表現者も増えましたよね。

誰がいちばん大きく変えたのかしら、貞操観念。私、不倫を広めたのは松田聖子さんだと思ってるんですけどね(笑)。ジェフくんが書いた本、私まだ持ってますよ。

──女性の価値が上がったということは、男性は相当頑張らないと彼女たちを口説けなかったわけですよね。当時のデートにかける熱量は、凄まじいものがあったんじゃないでしょうか。

クリスマスなんていうのは、その最たるものですよね。クリスマスに、家族と夜景が見えるレストランに行ったんですよ。そうしたら、面白いように、海が見える側に女性、反対側に男性、って男女が分かれて座ってるんです。まったく赤の他人のカップルがズラーッと。

──そのあとはシティホテルに泊まって……。クリスマスイブに恋人とホテルに泊まることがステータスっていうのも、当時生まれた文化ですよね。

相手がいなくても、とりあえず半年前から部屋だけ押さえるみたいな、ね(笑)。クリスマスまでに彼氏を作るっていうのが女性の合い言葉でしたから。そもそも誕生日とか、2人が出会った日とか、恋人たちの記念日がすごく増えたのがあの頃だったんです。

──今、80年代から90年代のカルチャーが改めて注目されるなかで、バブル的な遊び方を求める若者も増えています。例えば天王洲では、ディナークルーズが盛況らしいんですよ。その流れで、バブル期のデートスタイルが復権することもあると思いますか?

うーん、ちょっと難しいかもしれませんよね。当時って、ヴィトンのバッグを男に買わせて、ひとり3個持ちが当たり前。でも、今の女の子はブランドのバッグなんてひとつも持ってない。「一度は買ってみたいものです」ぐらいで、すごく堅実なんですよ。

──男性はデザイナーズブランドのスーツを着て。

丸井の赤いカードで36回払いとかね(笑)。とにかく、みんな同じ格好だったんです。男性はアルマーニのスーツ、女性はボディコンにソバージュかワンレン。今は自分に似合うか似合わないかで決めるでしょう? 堅実に、自分に照らして物事を判断する時代になりましたよね。そういう意味でも、パロディとしてバブルをなぞることはあるかもしれないけど、本気ではできないと思いますね。

──ただ、先ほどの記念日とか、男性が女性をエスコートする、みたいなオーソドックスな恋愛のセオリーは、その時代に確立されて今に至るようにも思うんです。

そうですね。それ以前は、就職して結婚して家庭を作ったら青春は終わり。それしか選択がなかったのに、「別の青春もあるんだ!」っていうことに男女が気づいたんですよね。それで、サーフィンをしたり、スキーに行ったり、恋人っていう単位で楽しむカルチャーが続々と生まれた時代だったんだと思います。

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