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〈メジロフィルムズ〉が描く 小さな映画配給の形:本屋・内沼晋太郎インタビュー

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〈メジロフィルムズ〉が描く 小さな映画配給の形:本屋・内沼晋太郎インタビュー
FEATURE
東京で起こっているハイパーローカルな動向を独自取材し、特集形式でお届け。
2015年10月7日
〈メジロフィルムズ〉が描く 小さな映画配給の形:本屋・内沼晋太郎インタビュー
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写真_下屋敷和文、文・編集_飯田ネオ
『A Film About Coffee』との出会い
〈メジロフィルムズ〉ができること

──どうしてこの映画『A Film About Coffee』を第1作に選ばれたのでしょう?

まず率直に言ってすばらしい映画だった。そして、何となく自分たちと似てるところがあったんです。まず監督が映画業界の人じゃないんですね。監督のブランドン・ローパーさんはCM監督で、映画の流通や配給に関してはプロではなかった。手探りで映画を作って、そのあと動画共有サイト「Vimeo」を使ってインターネット経由で配信するところから初めたんですよね。

リリース情報や招待状なども自分たちで制作し、各所への宣伝活動を行っている。

リリース情報や招待状なども自分たちで制作し、各所への宣伝活動を行っている。

それを見た人たちが「上映会をやりたい!」と言って、世界中で自主上映が行われるようになった。日本でも自主上映が何度か行われていたんです。すでに上映済みでネットでも観れる映画だったので、これまで配給が付きにくかったというのもあると思います。だからこそ、小さくて駆け出しの、フレキシブルに動けるぼくたちがやる意味があると思いました。本とコーヒーの相性もいいですから、自分が今までやってきたこととの親和性も高いですしね。

──〈メジロフィルムズ〉が考える映画上映とはどういうものでしょう?

まずはこの映画を配給するためにスタートしたので、これからどうなるかはわかりませんし、偉そうなことは言えません。ですが、映画を映画として上映するだけじゃなくて、たとえばこの『A Film About Coffee』ならばコーヒーのある時間、コーヒーのある何かを届けていけたら幸せだなと思うんですね。映画の届け方自体を考えるというか、B&Bで本屋と相乗効果のある別のものとの組み合わせを考えているように、「この映画はどうやって上映するのがいちばんいいのかな?」「何を組み合わせるのがいいのかな?」っていうことを映画にあわせて考えていきたいなと思うんです。

自分たちが収穫している珈琲豆を「エスプレッソ」として味わう瞬間。そんな栽培者の表情を捉える。

映画内のひとコマ収穫した珈琲豆を、エスプレッソという形で味わう栽培者の表情を捉える。(MotionGalleryより)

この映画の場合、やっぱりコーヒーが大きな主題なので、コーヒーの香りとともに楽しんでもらいたい。例えば、上映会場の近くのコーヒー屋さんとコンタクトをとって、初日のイベントにはこだわりのコーヒーをいれていただくとか……。

それこそシネコンでかかるような大きな映画は、映画ビジネスという大きな枠組みのなかでやっていくほかないと思うんですけど、せっかく小さな規模でやるので、必ずしも映画の配給だけにこだわらずに、こまめに手を入れていきたいなあと。

──映画ファンだけじゃなく、コーヒーファンにも嬉しい試みですね。

コーヒーが好きな人は全国にたくさんいらっしゃいますからね。あと、公開にあわせて本を作ろうと思っています。企画はまとまっていて、12月には出版できるよう動いています。

あくまでアメリカのコーヒーカルチャーが中心の映画ですが、日本のコーヒー店もたくさん出てくるんですね。「Blue Bottle Coffee」のジェームス・フリーマンさんが映画の中で、「コーヒー屋を始めるにあたって、日本の喫茶文化にリスペクトをして影響を受けた」というお話をされます。そのシーンの後に、ひとつの例として「大坊珈琲店」が紹介されるんですよね。かつて表参道にあって、今はもうなくなってしまったのですが、まだ営業されていたころにカメラが入っているので、今やとても貴重な映像となっています。

大坊珈琲店の大坊勝次氏。映画ではその細やかな仕草が丹念に記録されている。(MotionGalleryより)

大坊珈琲店の大坊勝次氏。映画ではその細やかな仕草が丹念に記録されている。(MotionGalleryより)

そこで、ジェームスさんが影響を受けた日本の喫茶文化というのは一体なんなのだろうと。何がそんなにアメリカの人たちを魅了したんだろうということは、映画ではそれほど描かれていないんですね。もちろんそこが主軸ではないので、映画としてはそれでいいんですが、日本で上映する以上、何か補足するようなコンテンツがあればいいなと考えたんです。

──それは面白そうですね!

本の仕事をしてきたぼくたちだからこそできることですしね。

あと反響があったのが、食べものに関する映画を上映する「第6回 東京ごはん映画祭」(2015年10月31日〜11月13日開催、シアター・イメージフォーラムほか)で先行上映をやらせていただくことになったんですね。その中で1日だけ大坊珈琲店が復活するという、プレミアムなイベントを開催することになって。それが30分で完売したらしいんですよ。

はじめてのことばかりでずっと不安だったのですが、それを聞いてちょっとだけ安心しました。「あ、この映画はひょっとしたら、たくさんの人に観てもらえるかもしれないぞ……」って。

 

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