板橋区赤塚の板橋区立美術館で、「江戸に長崎がやってきた! 長崎版画と異国の面影」が開催されている。会期は2017年2月25日(土)から3月26日(日)まで。

「江戸に長崎がやってきた! 長崎版画と異国の面影」キービジュアル(公式サイトより)
長崎版画とは、祝砲を放ちながら長崎港に入港するオランダ船や唐船、ギヤマンの杯や肉料理が並ぶ出島商館員の食卓など、海外との貿易都市である長崎に材を求め、異国趣味に溢れた町の雰囲気を伝える版画のこと。江戸中期から100年以上にわたり長崎で版行され、主に土産物として親しまれてきた。長崎絵としても広く知られている。

針屋版「大清人」(神戸市立博物館/公式サイトより)

文錦堂版「阿蘭陀人」
(長崎歴史文化博物館/公式サイトより)

版元無記「阿蘭陀人図」
(長崎歴史文化博物館/公式サイトより)
いわゆる浮世絵のひとつであるが、長崎という土地柄もあり、中国版画や西洋画の影響を大きく受けている。江戸で流行した浮世絵が鮮やかな色味であるのに対し、長崎版画はいずれも渋い色味で描かれていることが多い。
市中にあった複数の版元が、制作から販売まで一貫して手掛けたこれらの版画には、作者の署名どころか、版元名すらないこともしばしばでした。実態は謎に包まれていますが、西洋画法に秀でた荒木如元や川原慶賀、舶来画を鑑定・模写する唐絵目利まで様々な画人が関わったと推測されています。また、版元・大和屋に入婿した磯野文斎のように、合羽摺を主とした長崎版画の世界に、江戸仕込みの本格的な多色摺で挑み、洗練された作品を世に送り出した絵師もいました。(公式サイトより)
本展覧会では、長崎版画の源流とされる蘇州版画や、その影響が色濃い初期作品から、報道性を盛り込んだ幕末の作品まで約100点を展示。また、長崎で描かれた異国の面影を感じさせる肉筆作品約30点も展示するという。

川原慶賀「長崎蘭館饗宴図」(個人蔵/公式サイトより)
会期中には長崎版画に詳しい講師を招いた講演会も行われる。「長崎版画と異国趣味」や「出島の暮らしと描かれたオランダ人」、「長崎版画入門」など、展示内容をより掘り下げる内容だ。
子ども向けの版画ワークショップも開催予定。長崎版画を取り巻く諸相を探りつつ、版画をより身近に感じることができる、貴重な展覧会となっている。
江戸に長崎がやってきた! 長崎版画と異国の面影
会期:2017年2月25日(土)~3月26日(日)
時間:9:30~17:00(入館は16時30分まで)
休廊:月 ※3月20日は祝日のため開館し、翌日休館
会場:板橋区立美術館
場所:板橋区赤塚5-34-27
料金:一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円
※土曜日は小中高校生は無料で観覧可
※20名以上団体・65歳以上・障がい者割引あり(要証明書)
URL:http://www.itabashiartmuseum.jp/exhibition/ex170225.html
主催:板橋区立美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
協賛:ライオン、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜
特別協力:神戸市立博物館、長崎歴史文化博物館
[関連イベント]
■講演会「長崎版画と異国趣味」
日程:2017年3月11日(土)
講師:成澤勝嗣氏(早稲田大学文学学術院 教授)
■講演会「出島の暮らしと描かれたオランダ人」
日程:2017年3月18日(土)
講師:松井洋子氏(東京大学史料編纂所 教授)
■講演会「長崎版画入門」
日程:2017年3月20日(月・祝)
講師:植松有希(当館学芸員)
いずれも講義室にて14:00〜15:30、聴講無料、先着100名。
■担当学芸員によるスライドトーク
日程:2017年2月26日(日)、3月12日(日)
時間:14:00~15:00
料金:無料、先着100名
会場:講義室
■ワークショップ ひよこ・たぬきアトリエ
対象:3歳〜小学生の児童とその保護者
※詳細は公式サイトを参照