中央区銀座の「資生堂ギャラリー」で、写真家・石内都氏の個展「Frida is」が開催される。会期は2016年6月28日(火)から8月21日(日)まで。入場無料。

写真:石内都
1979年に第4回木村伊兵衛写真賞を受賞し、同じ年に生まれた女性の手と足をクローズアップした『1・9・4・7』(1990年)、母の遺品を撮影した『マザーズ2000‐2005未来の刻印』(2005年)、原爆で亡くなった人々の遺品を撮影した『ひろしま』(2007年〜)など、皮膚や衣服の時間経過を通じた写真表現を行っている。

撮影をおこなう石内氏。(写真:Ito Kaori)
本展は、2012年にメキシコシティにあるフリーダ・カーロ博物館から依頼を受け、メキシコを代表する画家、フリーダ・カーロの遺品を3週間にわたって撮影した作品で構成されている。本作品の、日本での本格的な発表は初となる。

写真:石内都

写真:石内都
フリーダの生家でもある“青い家”と呼ばれる博物館で、彼女の死後50年となる2004年に封印を解かれた遺品には、フリーダが身に着けていたコルセットや衣服、靴、指輪などの装飾品に加え、櫛や化粧品、薬品などが含まれていた。石内氏はこれらの持ち物を丹念に配置し、35ミリのフィルムカメラを手に、自然光の中で撮影をした。フリーダと対話をするように撮った写真は、波瀾に満ちた人生を送ったヒロインとしてのフリーダではなく、痛みと戦いながらも希望を失わずに生き抜いたひとりの女性の日常をとらえている。石内氏は「同じ女性として、表現者として、しっかり生きた一人の女性に出会ったということが一番大きかった」と語る。

石内氏近影(写真:Kenichi Aikawa)
本展では『Frida by Ishiuchi』、『Frida 愛と痛み』シリーズより31点の作品を展示する。これらのシリーズ作品は2013年11月に「PARIS PHOTO 2013」で初公開され、メキシコの出版社「RM」より写真集が発売された。2015年にはマイケル・ホッペン・ギャラリー(ロンドン)で初の大規模な展示が行われ、日本では石内のメキシコでの撮影過程に密着したドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品 ―石内都、織るように』(監督:小谷忠典)が上映され、話題を呼んだ。
同時期には資生堂銀座ビル、SHISEIDO THE GINZA、東京銀座資生堂ビルでも石内の作品を展示するという。また本展に合わせて未発表の写真を中心とした写真集『フリーダ 愛と痛み』(岩波書店)と石内の写真とエッセイ集『写真関係』(筑摩書房)が刊行されるほか、ドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品 ―石内都、織るように』が東京と大阪で再上映される。石内氏とフリーダ・カーロの物語をより深く知るためにも、ぜひあわせて鑑賞してほしい。
石内都展 「Frida is」
会期:2016年6月28日(火)~8月21日(日)
時間:11:00~19:00(日祝 11:00~18:00)
会場:資生堂ギャラリー
場所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
休廊:月 (月が祝日にあたる7月18日も休館)
料金:入場無料
問い合わせ:03-3572-3901(fax. 03-3572-3951)
URL:http://www.shiseidogroup.jp/gallery/?rt_pr=tr547
主催:株式会社 資生堂
後援:メキシコ大使館
協力:The Third Gallery Aya/有限会社フォトグラファーズ・ラボラトリー
株式会社カシマ/有限会社小林額縁製作所
[関連イベント]
■対談
※申し込み受け付け終了
対談:石内都 × 黒河内真衣子 (mame デザイナー)
日時:2016年7月2日(土) 14:00〜16:00
会場:花椿ホール
場所:中央区銀座7-5-5資生堂銀座ビル3階
定員:200名
■黒河内 真衣子
くろごうち まいこ。1985年 長野県生まれ。2010年 黒河内デザイン事務所設立、自身のブランド「mame」を立ち上げる。2014年 毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。
http://www.mamekurogouchi.com
■映画「フリーダ・カーロの遺品 ―石内都、織るように」(監督:小谷忠典)
石内のメキシコでの撮影過程に密着したドキュメンタリー。6月下旬より以下映画館にて上映。
・東京:アップリンク(http://www.uplink.co.jp/)
・大阪:シアターセブン(http://www.theater-seven.com/)
■関連書籍
・写真集『フリーダ 愛と痛み』(岩波書店)
石内氏のフリーダシリーズより未発表の写真を中心とした、日本版オリジナルエディションの写真集。
発売日:2016年6月17日
体裁:A4判・上製
・『写真関係』(筑摩書房)
石内氏の約10年ぶりのエッセイ集。初期作品から最新作まで写真約50点もあわせて収録。
発売日:2016年6月上旬
体裁:A5判・上製・カバー装
[プロフィール]
■フリーダ・カーロ
1907年-1954年。20世紀前半というまだ女性アーティストが少ない時代に、自分自身のアイデンティティを模索しながらアーティストとしての地位を築いた人物です。華やかな刺繍やレースで飾られた民族衣装を身に着け、幼少期の病気や事故で体が不自由であったにもかかわらず、コルセットに装飾を施したり、民族衣装を自分の体に合わせてアレンジしたりと、苦しい状況の中でも常に美を意識していました。また、トロツキーやイサム・ノグチとの恋愛、メキシコの国民的英雄だった画家ディエゴ・リベラとの2度の結婚など、作品と共にその情熱的な生涯は現代の女性たちに今なお刺激を与え、広く共感を集めています。
■石内都略歴
1947年群馬県桐生市生まれ。神奈川県横須賀市で育つ。多摩美術大学デザイン科織コース専攻中退。1979年、街の空気、気配、記憶をとらえた初期三部作のひとつ『APARTMENT』で第4回木村伊兵衛写真賞を受賞。同じ年生まれの女性の手と足をクローズアップした『1・9・4・7』以降、身体の傷跡を撮ったシリーズを展開。2005年、母の遺品を撮影した『Mother's 2000-2005 未来の刻印』で第51回ヴェネチア・ビエンナーレの日本代表に選出されてから世界的に注目を集めるようになりました。2007年より現在まで続く、原爆で亡くなった人々の遺品を撮影した『ひろしま』も国際的に評価され、近年は国内外の美術館やギャラリーで個展を多数開催。2012年には、大正・昭和に流行した着物・銘仙を撮った『絹の夢』を発表、2014年には子どもの着物を撮り下ろした『幼き衣へ』を発表するなど、布や記憶にまつわる作品に精力的に取り組んできました。2014年には「写真界のノーベル賞」と言われるハッセルブラッド国際写真賞を受賞しています。2015年、J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)の個展「Postwar Shadows」では『ひろしま』がアメリカの美術館で初公開され、大きな反響を呼びました。