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〈東京、視線の片隅で〉第5回「街の公衆トイレ」

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COLUMN
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鑑賞池

October 2019

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2017年11月15日
〈東京、視線の片隅で〉第5回「街の公衆トイレ」
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文・写真_鑑賞池
上町のSFトイレ

さて、ぶらぶらとトイレを目的に東京をうろついていたところに友人の結婚式があり、久しぶりに会う列席した友人達にトイレについて調べている旨を話したところ、一人から世田谷の上町にとても豪華な公衆トイレがあるという情報を入手した。私はこのトイレを今回の最終目的地に定め、世田谷線上町駅に向かった。

上町駅。世田谷線で唯一駅構内にトイレがある。

上町駅は世田谷線で唯一構内にトイレを持つ駅であるそうで、非常に幸先が良い。駅を出て目的地に向かう道すがら、「ここにあった道標は区立郷土資料館に移築した」という非常に無意味な塚を見かけた。一体何の意味があるのだろうか。非常に好ましい無意味さである。

元にあった塚が移動したことを示す塚。トマソンの流儀に従えば「無用塚」と言えるだろう。無駄に時代がついている。

さて、その無用な塚を左手に見て少し歩くと道路の向こうに目的とする建築物を見つけることができた。なんと公衆トイレにもかかわらず二階建てであり、“Ship”という異名まであるらしい。まさに私達が少年時代に思い描いていた近未来のトイレと言えよう。いや、少年時代にトイレの近未来を思う少年少女などなかなかいなかったであろうから、この表現には語弊があるかもしれないが。

世田谷の2階建の近未来公衆トイレ“Ship”。

私は遠くから近くからこの異様な建築物を堪能した。そして、この近未来感あふれるトイレで用を足すと、えもいわれぬ充実感と共に一抹の虚しさを感じた。とはいえ、もしかしたら私はこの虚しさのためにこうやって東京中をぶらぶらしているのかもしれない。そして、この近未来感溢れるトイレから、今はもうすでにない北千住のSFトイレを思った。

歴史・文化遺産は行政などでも残そうとする力が働く。しかし、遺産と認められなかったものについては、ただスクラップ・アンド・ビルドがされていくばかりである。様々な理由を持って取り壊される歴史・文化遺産がいかに多いことか。もちろん遺産的価値がないものについては、躊躇なく取り壊されていく。実際に本稿の冒頭の北千住のSFトイレなど、歴史的にはなんの価値もないものだろう。

しかし、歴史的に価値があるものばかりが素晴らしいわけではない。一般的に古本で一番見つけにくいのは刹那的に捨て去られる雑誌だったりする。歴史とは刹那の繰り返しでもあるのだと、トイレを探し回って改めて考えた。

と言いつつも、やはりトイレは綺麗な方がいい。日本もトイレぐらいは世界最先進国であり続けたいものである。これからもどんどん新たなSFトイレを製作してもらい、大いに我々のような好事家を楽しませてほしい。

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