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〈東京、視線の片隅で〉第3回「タバコ屋の兼業」

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COLUMN
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鑑賞池

September 2017

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鑑賞池
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1978年生まれ。好きなもの:カレー、花。

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2017年8月19日
〈東京、視線の片隅で〉第3回「タバコ屋の兼業」
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文・写真_鑑賞池
学大駅前のランドマーク

最近、学芸大学に行くことが多い。もちろん学校ではなく、駅のことである。最近仲の良い友人が学芸大学に住んでいるので、遊びに行く機会ができたのだ。まったく縁がない東横線沿線だが、数日連続で通ったりしていると、なんとなく親近感も湧いてくる。

さて、私は学芸大学をもっと洒落た居心地の悪いところなのではないかと思っていたのだが、決してそんなことはなく非常に住み心地が良さそうな街であった。なにしろ改札を出て、まず一番目立つ場所にタバコ屋があるようなところである。

駅を降りるとすぐタバコ屋を兼ねた本屋がある。

このタバコ屋は書店に併設されている。駅前の書店というものも、もはや絶滅が危惧されるものであるが、その二つが並存しているものがランドマークになっていることに学芸大学という街の寛容さを感じる。郊外の再開発が進むエリアならばこうはいかないだろう。

東京の住人が考える「東京らしさ」とはなんだろうか。私にはそれが開発のしにくさに担保されるようになりつつあるように思えてならない。商店街が元気なのは開発のしにくい都市部ばかりで、開発しやすいところはどんどん新たな商業施設ができている。いまや都市部のほうが人の営みの形が残っているというのはなんとも皮肉なものである。

書店に入るとレジの男性が忙しそうに書籍を売っている。そこにはタバコも並んでおり、外からも中からもレジにいる人がタバコを売るシステムになっているようだ。ふと「この店はタバコと本のどちらを先に売り出したのだろう」と考え、雑誌を買うついでに尋ねてみると、男性は「私もよくわからないけど、本が先だったと思いますよ」と教えてくれた。書店は昭和3年からやっているようで、街の変化に合わせて柔軟に変化してきたことが見受けられる。中小の出版社のコーナーなども愛情を持って丁寧に品揃えしており、街の活気を裏付けるような良い書店である。

しかし、この書店のようにタバコ屋を兼業している店というのは、東京にどのくらいあるのだろうか。意識しだすと視界に結構入ってくるものである。

カフェ化した西荻窪

学生時代を過ごした西荻窪で、駅から東京女子大の方面に向かった突き当たりに文房具屋がタバコを売っているのをなんとなく覚えていたので、用足しついでに行ってみる。しかし、記憶と違い文房具屋はすでになく、カフェに変わっていた。

ポップな看板に「SINCE1939」の文字が踊る。

軽い落胆を覚えながらも店内を覗くと、たばこを売っているコーナーが残っていた。店に入って話を聞いてみると、3年ほど前にカフェに改装したが、その際タバコ屋は残したそうだ。店自体は昭和14年に文房具屋を創業し、当時からタバコも売っていたが、戦時中にタバコの包装紙が不足し、さらに配給制となったことで一旦タバコ屋は廃業したらしい。昭和の終わりぐらいに近所のタバコ屋が店を畳んだので、タバコの販売権を取得し、また売るようになったとのことであった。

なお、「タバコ販売権」というのは普通に暮らしていると馴染みが薄いものだが、東京のような都市ならば、繁華街では条件によって25m、50mの2段階で、市街地では100m、住宅地では条件によって200m、300mの2段階という距離を近隣のタバコ販売店と間隔をあけなければいけない、という法律がある(街の規模によって変わる)。

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